2020年(令和2年) 6月13日(土)付紙面より
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山形大農学部(村山秀樹学部長)は11日、片平光彦教授(52)=生産機械学=らが産学官連携で進めている「庄内発の直播用播種機開発プロジェクト」が、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター」(生研支援センター、神奈川県川崎市)の本年度「イノベーション創出強化促進事業」に採択されたと発表した。向こう3カ年で同大だけで約2400万円の研究費配分を受け、省力・低コストな無コーティング湛水直播用播種機の作業能率向上などに取り組む。
プロジェクトは2014年から、東北農業研究センター(岩手県盛岡市)が主幹となり、山形大、酒田市の農機具メーカー「石井製作所」、県水田農業試験場などで進めている。米全体の需要が減る中で、業務用米は外食・中食で需要が増加。一方、ブランド米より低価格で生産者は作りたがらないため、省力・低コストな無コーティング湛水直播の普及によって生産量を増やし、安定供給する狙い。
山形大と石井製作所では、トラクターに装着するアタッチメントを中心にした播種機の開発を担当。給水させた種もみが張り付きにくいホッパー(供給容器)や、むらなくまける分散板などを開発し、石井製作所は17年に市販化。これまで約30台(うち15台は今年)が販売され、内陸や青森、秋田、新潟各県の計約40ヘクタール(19年度)で稼働。この実績が認められ、プロジェクトは今年3月、第8回ものづくり大賞東北経済産業局長賞を受賞した。
生研支援センターの採択事業では、全体として向こう3カ年で約1億2400万円(うち自己資金約5000万円)の研究予算を確保。山形大では作業効率を上げるための播種機の大型化、公道でも走れるようアタッチメント部分の折りたたみ化などの研究に取り組む。29年度までこの播種機を使った湛水直播の作付けを2万ヘクタールまで増やすのが目標で、その場合の生産費削減効果は約98億円に上ると試算されている。
片平教授は「ロボットトラクターと連動した無人協調播種を目指したい。本県は直播の先進地だが、鉄コーティングが主流で、無コーティングは少ない。より低コストな本技術を確立し、普及させたい」と意欲を語った。