2020年(令和2年) 10月13日(火)付紙面より
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文化・人種・性別の違い、障害の有無にかかわらず共に生活しやすい社会「共生社会」の実現に向けて酒田市は、特に車いすユーザーが走行可能の道路といった情報をシェアできるよう市民を挙げて「バリアフリーマップ」を制作する。市庁舎で10日、制作に向けたキックオフイベントが開かれ、生徒・学生から一般まで市民約60人が参加。バリアフリーマップアプリ「WheeLog!(ウィーログ)」をリリースする一般社団法人・ウィーログ(東京)の織田友理子代表理事の講話を聴講したほか、実際に車いすで街歩きを体験した。
障害の有無にかかわらず互いに個性を尊重しながら、共に自分らしく暮らせる街づくりを目指し市は今年4月、「障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例」を制定。誰もが暮らしやすい街になるよう「心のバリアフリー」を推進している。
一方、市は来年に延期された東京五輪・パラリンピックにおけるニュージーランドトライアスロンチームのホストタウンとして登録されている。また、心のバリアフリーに向けた取り組みを実施し、大会以降もその実現を目指す自治体「共生社会ホストタウン」にもなっており今回、ウィーログの協力でバリアフリーマップを制作することにした。
22歳で全身の筋肉が衰える「遠位型ミオパチー」と診断され、長男出産後に車いす生活を余儀なくされた織田代表は2017年、車いすで走行可能な道路、利用できる多目的トイレや飲食店、エレベーターの位置といった情報を、アプリ利用者が地図上に表記していく「ウィーログ」をリリースし、翌年に法人を立ち上げた。この日はマップ開発の思いなどをオンラインで講話。「車いすには越えられない段差『4・5センチの壁』がある。この壁を乗り越えるためバリアフリー情報のプラットフォームを構築したかった。ウィーログはみんなでつくる世界で一番温かい地図」などと述べた。
法人事務局による利用方法の解説に続き、参加者は市所有の9台の車いすに分乗して中心市街地を実際に走行。「体の不自由な人向けの信号機がある。これは便利」「ちょっとした坂でも急勾配に感じる」「段差が怖い」などと話しながら早速、アプリに入力していた。
市はアプリ上の地図の他、集まった情報をウィーログから提供してもらって紙ベースでも作製する方針。矢口明子副市長は「以前にも同様の地図を作ったが、古くなっている上、共有できていなかった。市民みんなで作り、みんなで共有することが大事。ぜひ一緒に作っていきましょう」と話した。