2020年(令和2年) 12月3日(木)付紙面より
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鶴岡の冬の風物詩となっているお菓子「切山椒(きりさんしょう)」が、市内の各菓子店で作られている。厄よけや長寿への願いを込めて食べられてきた伝統の菓子で、今年は新型コロナウイルス感染症のこともあり、例年より多く、県内外から引き合いがあるという。
蒸したもち米に黒糖、サンショウの粉を練り込んで作る餅菓子。明治初期に一日市町(本町二丁目)にあった老舗菓子店「長崎屋」の八代目・佐藤甚右エ門が、伊勢参りの帰りに浅草の仲見世の酉の市で見つけたものに着想を得たという。当初は菓子作りで出るくずを集めて乾燥させ、石臼でひいた粉を原料にした。浅草のものは短冊状だったが、鶴岡では細長い形にし、七日町観音堂(本町二丁目)の「お観音はんのお歳夜(としや)」(12月17日)のだるま市で売ることが定着。サンショウは庭の鬼門に植えて厄よけとし、多くの実をつけるため子孫繁栄も象徴。細長い形で長寿を願い、年の瀬に食べる縁起菓子として親しまれてきた。
菓子店「木村屋」では今年、11月初旬から同市覚岸寺のファクトリーストア工場で製造を始めた。原料のもち米は昨年まで県外産を使っていたが、今年は鶴岡産「でわのもち」を50%使用。多い日には約1400箱(1箱170グラム入り)を作るという。
吉野隆一社長(66)は「でわのもちを使い、よりコシが強く、上品な味になった。年々、内陸や県外からの注文が増えている。今年はコロナの影響で厄よけの意識が高まっているのか、例年より売れている」という。製造は今月半ばまで続く。