2021年(令和3年) 3月24日(水)付紙面より
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村山地域での新型コロナウイルスの感染者急増を受け、県と山形市は22日、山形市を対象区域に共同で緊急事態宣言を発出した。期間は4月11日までの約3週間で、同市全域や市外への不要不急の外出や移動の自粛などを市民に要請するほか、市外の県民に対して山形市との往来は可能な限り控えるよう呼び掛ける。
22日現在の県内の感染状況は、18日以降5日連続で新規感染者が2桁出ており、21日には過去最多の31人、22日も21人の感染が確認された。直近1週間の新規感染者数は110人で、このうち107人が村山地域。山形市在住者は76人に上っている。同市における直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数は30・4人で、政府のステージ4の指標(25人)を超えている。同市の県立中央病院では22日現在で病床占有率が62・2%となり、県全体でも25・7%と政府のステージ3(20%以上)を超えた。
こうした状況から県は22日の県新型コロナウイルス感染症に係る危機対策本部員会議で、県独自の注意・警戒レベルについて県全体ではレベル3(警戒)を維持するが、村山地域はレベル4(特別警戒)、山形市はレベル5(非常事態)にそれぞれ引き上げることを決定した。
同日、県庁で吉村美栄子知事と佐藤孝弘山形市長が緊急の会見を行い、山形市を対象区域に県独自の非常事態宣言を共同で発出。吉村知事は「隣県での感染者数急増に引きずられ、山形市内で市中感染が起きているというのが医療関係者の見解。基本的な予防対策や、大人数での飲食や混雑する場所へ行かないよう呼び掛けたい」、佐藤市長は「市内の飲食店や福祉施設でクラスターが相次いでおり危機感を持っている。マスク着用など基本的な対策の徹底が重要」とそれぞれ述べた。
県と山形市は来月11日まで同市全域での不要不急の外出や移動の自粛を呼び掛けるほか、飲食店への個別通知、繁華街での呼び掛け実施などを強化する。今後、医療体制のひっ迫が顕著になった場合は市内の飲食店に営業時間短縮の協力要請を行う方針。
2021年(令和3年) 3月24日(水)付紙面より
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疫病から村人を守った言い伝えがある庄内町廿六木(とどろき)集落の「下塚の行者の松」が、根元から折れ住民を悲しませている。傘のような枝ぶりが見事で、地区のシンボルとなっていた。先月上旬の強風に耐えられず、折れたものとみられている。
旧余目町が発刊した冊子「あまるめの名松100選」によると、「下塚の行者の松」は高さ19メートル、幹回り4・2メートル、樹齢は300年以上とみられている。塚に眠る呪術師・容海(ようかい)上人が「疫病が流行したときには私に願いなさい」と言い残した伝説があることから「容海の遺言の松」ともいわれている。
約20年前に酒田市の樹木医に診てもらったときは「まだ樹勢があるから大丈夫」とのお墨付きをもらったが、数年前に落雷が直撃。太い幹にひびが入り、地区民を心配させていた。
強風で折れた後は、集落内で話し合いの場を持ち、撤去することで合意。土地所有者の庄内町が40万円の予算を計上した。
22日に行われた撤去では、町内の製材業者が幹をチェーンソーで輪切りにしたり、枝をそろえてトラックに積み込む作業を進めていた。幹や枝は薪(まき)ストーブの燃料などに有効利用する。
廿六木集落自治会の鈴木修二会長は「折れてしまったことは、とても残念でならないが、疫病退散の力を持つ容海上人が、コロナ禍が一日も早く収束するよう身代わりになってくれたのだろう、と思っている住民もいる。使える幹の一部は廿六木公民館の看板に仕上げて、これまでと変わらず集落の心のよりどころにしたい」と話していた。
廿六木集落の「上塚と下塚伝説」とは、今から約350年前、呪術師の千光院と容海上人が廿六木地域で伝染病が流行した際に現れ、疫病退散の祈祷(きとう)をしたところ不思議と村人全員が回復。県立庄内総合高校の近くにある「上塚」には千光院が、「下塚」には容海上人が眠り、集落民を守り続けていると言い伝えられている。