2022年(令和4年) 3月22日(火)付紙面より
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江戸期から明治期にかけ遠隔地交易の主役だった北前船の寄港地関係者らが交流を深める「北前船寄港地フォーラムin秋田」が19日、秋田市の秋田キャッスルホテルで開かれた。30回の節目となった今大会には、酒田市の丸山至市長はじめ全国各地から約300人が出席。パネル討議や講演などを通じ、北前船が果たした役割について理解を深めるとともに、地方間の交流促進の可能性をあらためて考察した。第31回フォーラムは今年10月、フランス・パリで開催する予定。
フォーラムは、酒田市美術館長を務める作家の石川好さんが提唱した「北前船コリドール構想」に基づき2007年11月、新田嘉一平田牧場グループ会長が中心になって酒田市で第1回を開きその後、規模を拡大しながら全国の寄港地などで随時開催。地域間交流の促進を図るため、このフォーラムを母体として17年にはJR東日本やANA総合研究所、平田牧場グループなどが「北前船交流拡大機構」を立ち上げた。翌18年5月には中国・大連でも開催した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、フォーラムは一昨年2月に鹿児島県で実施して以来。今年は河村瑞賢が日本海、瀬戸内海を経て大阪に至る西廻り航路を確立し350年の節目に当たり、北前船への注目が高まる中、この日は日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間?北前船寄港地・船主集落」を構成する市町村の関係者らが出席した。
「北前船で旅した秋田蘭画つなげる・つながる世界と未来」をテーマにしたフォーラムでは、以前に酒田市の東北公益文科大学でも講演したことがある歴史学者の磯田道史さんが特別講演。「新しい価値を生む現代の北前船 食や文化を世界の架け橋に」と題したパネル討議も行われた。席上、北前船交流拡大機構名誉会長を務める新田会長は「このフォーラムは秋田・山形の県境を越えた交流で、一つの経済圏を創出して地域を活性化させたいというのが始まり。今では日本各地のみならず、中国・大連で開催するなど、まさに名実ともに日本を代表するフォーラムへと発展した。今年は西廻り航路開設350年で、ますます北前船が注目される。北前船がつむいだ絆が地域の繁栄と世界の平和に寄与するものと確信する」とメッセージを寄せた。
同日夜のレセプションでは、演歌歌手の五木ひろしさんが映像で参加し、「日本海行く、希望の船は」と歌う新曲「北前船」を今年5月に発表することを報告。この曲に合わせて酒田舞娘(まいこ)の小結希さん、千鶴さんと、小鈴姐さんが華やかな舞を披露した。
翌20日は秋田県内を巡るエクスカーション。フォーラム前日の18日夜には前夜祭も行われ、「寄港地」を縁に全国各地から集まった関係者が交流を深めた。次回のパリでのフォーラムは、新型コロナウイルスの感染状況、世界情勢を踏まえ今後、具体的な検討を進める。