2022年(令和4年) 10月26日(水)付紙面より
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テレビ番組の司会やコメンテーターでおなじみの歴史学者・磯田道史さん(51)=国際日本文化センター教授=が、国学者で出羽三山神社第三代宮司の物集高見(もずめたかみ)氏の和歌短冊1点を同神社に奉納した。「私が尊敬する国学者。物集先生も喜んでくれるはず」と磯田さんが持っていた短冊を宮野直生宮司に贈った。宮野宮司は「大変貴重なものを奉納していただき感謝したい」と羽黒山頂にある出羽三山歴史博物館で保管する。
物集高見氏(1847―1928年)は大分県杵築市生まれ。国学者だった父親の影響もあり漢学や国学、蘭学を学んだ。25歳のとき教部省で辞書編さんを手掛けたが、このころから言語に対する意識がさらに高まったものとみられる。その後、国文法研究には英文法も必要と考え英語の習得にもいそしんだ。内務省に移り1879(明治12)年、33歳で出羽三山神社の三代宮司に就任し83(同16)年まで務めた。86(同19)年には帝国大学(東京大学)の教授に。文部省の参事官も兼任した。「てにをは教科書」や「かなづかひ教科書」「日本大辞書ことばのはやし」「源氏物語提要」「和歌抄」など数多くの著書がある。
磯田さんによると、物集氏の短冊は数年前に京都の古書店から購入したもので「われはまたきかぬはつねをほとときすもりに三声をなさつといふなり高見」と書かれているという。宮野宮司に差し出した手紙では「雲井(宮中)でホトトギスは三声なくのに森の中ではなかないものらしい、と詠まれたものと思われる。物集先生のいらした森は羽黒山だったのでしょうか(抜粋)」と解説している。
磯田さんは先月、酒井家庄内入部400年を記念した講演会で庄内を訪れた。その際、出羽三山神社を参拝。宮野宮司と親交を深めた。物集氏の短冊は、自宅の書斎に大切にしまっていたものという。出羽三山神社歴史博物館の渡部幸学芸員は「歴代宮司を紹介する企画展の時に、ぜひ展示したい」と話していた。