2022年(令和4年) 11月23日(水)付紙面より
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全国の自治体が連携し、地元の「食」や「食文化」の活性化を目指す「豊かな食の郷土づくり研究会」の第5回食文化による郷土づくりカンファレンスが19日、鶴岡市の東京第一ホテル鶴岡で開かれた。
同研究会は全国90の自治体などで構成され、それぞれの取り組みに関する情報・意見交換、課題解決へ向けたカンファレンスを2019年から毎年開催している。鶴岡での開催は初回に続いて2度目。
この日は全国各地の会員ら141人が参加。日本を代表する和食やイタリアンの料理人が講演や対談を行った。
初めに「地域×食・食文化×料理人 3者連携による地域の魅力づくり」をテーマに、料亭菊乃井3代目主人の村田吉弘さん(京都市)が特別講演。村田さんは特定非営利活動法人日本料理アカデミー、一般社団法人全日本・食学会の両理事長を務め、2018年には文化功労者に選ばれた。米の消費が減っていることを憂い、「将来を担う子どもたちに米、だしのうまみがきいた和食料理など、おいしくて健康的なものを好きになってもらい、米の消費拡大につなげたい。そのために京都市には私が提唱した食育指導員制度がある。食文化や健康な食生活を子どもたちに普及させるため、指導員がボランティアで学校に出向き、啓発活動を行っている」と話した。
続いてアル・ケッチァーノオーナーシェフの奥田政行さん(鶴岡市)が平田の赤ネギを「日本三大ネギ」に押し上げた戦略を紹介。「山形大農学部の江頭昌宏教授と出会い、地元の在来食材について深く学んだ。生産者と協力して種の選別を続け、本来の味と形に近づける作業を数年繰り返していた。すると品質が安定しておいしくなった。在来野菜は可能性に満ちている。こういった食文化を守っていかなければいけない」と語った。
村田さんと奥田さんの特別対談も行われ「食文化の力・可能性」について奥田さんは「庄内は優れた食文化と歴史文化財が多い。観光に結び付けて強く発信していけば、全国からの観光客やインバウンドで庄内はさらに活気あふれる地域になる」、村田さんは「郷土に伝わる食文化は地域それぞれの特色でもあり、いつまでも引き継がれていくべきもの。今後も地域を食で盛り上げるため、料理人同士で情報交換を盛んに行い、切磋琢磨(せっさたくま)していく」と意見を述べていた。
特別対談に続きMaternal代表の小野愛美さんのコーディネートでパネルディスカッションも行われ、「食文化を担う『料理人』『生産者』の役割・貢献について」をテーマに、Atelier CHIANTIオーナーシェフの川又真さん(新潟県新潟市)、yomoyamaya代表の山崎誠さん(大分県臼杵市)、日本料理わたなべ店主の渡部賢さん(鶴岡市)、ワッツワッツファーム代表の佐藤公一さん(同)の4人が意見を交わし合った。
来年度のカンファレンスは臼杵市で行われる。
2022年(令和4年) 11月23日(水)付紙面より
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第65回高山樗牛賞授賞式が21日、鶴岡市のグランドエル・サンで行われた。本年度の樗牛賞は該当者がなく、小中高校生を対象とした奨励賞を受賞した3人へ表彰状などが贈られた。
高山樗牛賞は、庄内が生んだ明治の文豪・高山樗牛(1871―1902年)の偉業を顕彰するとともに、地方文化の向上などを目的に鶴岡市教育委員会が1958年に制定した。樗牛賞の該当者なしは4年ぶり9回目。児童生徒対象の同奨励賞は2003年に設置され、今回は小中学生の部で亀ケ崎小6年の齋藤里恋(りこ)さん(12)と朝暘二小6年の齋藤文音(あやね)さん(12)、高校生の部は酒田東高3年の若生真衣(まい)さん(17)がそれぞれ受賞した。
授賞式には受賞者と学校関係者、選考委員、来賓など約30人が出席。布川敦教育長が受賞者に表彰状とメダル、受賞者が在学する各校へ記念の盾をそれぞれ手渡した。式後、受賞者がそれぞれ自分の作品を紹介するとともに「栄誉ある賞に自分が選ばれると思わなかった。今後も文芸活動を続けていきたい」などとスピーチした。
齋藤里恋さんは童話「鬼ガラス」を創作。主人公のカラスが友情や人と交わることの大切さを知り、成長していく姿を描いた。昨年のENEOS童話賞小学生以下の部で優秀賞を受賞しており、豊かな表現力と構成力が高く評価された。
齋藤文音さんはコロナ禍を機に新聞を読むようになった。受賞作の新聞感想文「新聞と私の対話『日々是文音』」は数社の記事の比較や感想、要約など多様な読み方をし、物事を広く捉え表現力を高めようという姿勢がうかがえる。
若生さんは文芸部に所属し、詩や小説などの創作に取り組んできた。受賞作の詩「空を見上げて」は学校を出てすぐの空と、自宅に着く頃の変化を詠んだ。日々の考えや思いが繊細な言葉で表現され、豊かな感性と表現力が評価された。