2022年(令和4年) 11月25日(金)付紙面より
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鶴岡工業高等専門学校と筑波大、九州大の共同研究チームは、希少で高価なプラチナを使わず発電できる安価な燃料電池用の「窒素ドープカーボン触媒」を開発した。希少金属を使わないものとしては世界最高レベルの性能を持つ。耐久性も高く燃料電池の製造コストを大幅に抑えられることから燃料電池を動力とする車への応用が期待される。
水素と酸素からエネルギーを作り出す燃料電池は現在、プラチナ触媒が使われているが、埋蔵量が限定されていることもあり、価格(プラチナ触媒5グラムで約15万円)は高い。燃料電池の普及には、プラチナを使わない新たな触媒開発が求められている。
共同研究は、鶴岡高専の卒業生で筑波大大学院2年の本間海斗さん(24)=鶴岡市出身=が所属する研究室で進められてきた。本間さんは触媒を使った電極の性能を上げるため、鶴岡高専時代の担当教員だった伊藤滋啓准教授と森永隆志教授に協力を求めた。筑波大の武安光太郎助教を含め計7人で今冬、研究チームを立ち上げた。
チームは炭素触媒の炭素分子の一部を窒素原子と入れ替える実験を繰り返し、プラチナ触媒と同じ働きをする「窒素ドープカーボン触媒」を完成させた。さらに森永教授の主導で開発した高分子材料「ポリマーブラシシリカ粒子」を添加し、発電力を上げた。この触媒を使った燃料電池のコストは10分の1から50分の1ほどに抑えられる可能性があるという。
森永教授は「世界に通用する研究に貢献できて誇らしく思う。まだ発展段階だが、さらに性能が高い水素燃料電池の開発を進めていきたい」、伊藤准教授は「成長した本間君と再び研究を共にできたのはとても喜ばしいこと。筑波大と肩を並べられる鶴岡高専の研究力をアピールできたと思う」と話した。母校の鶴岡高専と筑波大の橋渡し役となった本間さんは「鶴岡高専時代の研究の重要性を改めて感じることができた。これからもプラチナを使わない燃料電池の実用化と普及に向けて研究を続けていきたい」と語った。
【触媒とは】化学反応の速度を速める物質。燃料電池は、触媒が水素をイオン化させることで電気が発生する。
2022年(令和4年) 11月25日(金)付紙面より
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女性消防吏員の新規採用に向け酒田地区広域行政組合消防本部(日下部進消防長)は23日、女子を対象にした職業体験「ワンデイインターンシップ」を酒田市大町の酒田消防で実施。女性に特化した募集用漫画パンフレット制作・配布に続く第2弾で、管内在住の女子生徒・学生9人が参加。消防ホースを用いて実際に放水体験するなどし、消防業務の一端に触れた。
消防業務の多様化が進み、全国各地で女性消防士が活躍している。酒田消防には200人余の消防吏員が在籍しているが、このうち女性は2人のみ。採用増に向け酒田消防は昨年6月、庁内に若手・中堅職員による採用促進プロジェクトチーム(佐藤義明リーダー、9人)を組織。メンバーは今夏、東北公益文科大学(同市、神田直弥学長)の女子学生5人と共に、募集用漫画パンフレット「女性消防職員のなりかたって知ってる?in酒田」を作成、広く閲覧できるようにし好評を博している。
初めて実施した女子限定のインターンシップは、採用試験受験者数の増加に向けてまずは女子生徒・学生から消防業務に関心を持ってもらおうと企画。中学生5人、高校生と大学生各2人の計9人が参加した。
生徒・学生たちは午前8時半から“業務開始”。防火服に着替えた後、消防車の前で記念撮影に臨み、2班に分かれて消防の各業務を順に体験した。このうち放水体験では、「ホースを伸ばす際は、ボーリングでボールを投げるイメージで」「ホースには向きがある。連結する時はしっかり確認を」「1分間に出る水量は400―500リットル。風呂2杯分」などと指導を受け、実際に水を出した。
「父親が消防士」と言う渋谷杏梨さん(16)=酒田東高1年=は「公務員という仕事にも多少興味がある。放水はけっこう重く、コントロールできなかった」と話した。当初は「消防女子会」と銘打った座談会を実施する予定だったが、新型コロナウイルスの感染急拡大に伴って中止。酒田消防総務警防課は、今回参加した女子生徒・学生の意見を聴きながら来年以降のインターンシップ開催を検討するという。