2022年(令和4年) 11月29日(火)付紙面より
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南庄内緩和ケア推進協議会(会長・福原晶子鶴岡地区医師会長)主催の第15回緩和ケア市民公開講座「庄内プロジェクト―地域で支える緩和ケア」が26日、三川町なの花ホールで開かれた。緩和ケアチームの一員として心のケアを担う「臨床宗教師」の僧侶2人が、傾聴を通じて終末期の患者に寄り添う役割について講演した。
臨床宗教師は、死期が迫った患者や遺族に対して、宗教や宗派にかかわらず公共性のある立場から専門的な心のケアを行う宗教者。死への不安、生きる意味の喪失感、愛する人を失った悲しみなど、それぞれの心の苦しみや痛みを理解し、和らげるための支援を行う。
公開講座は「生死の苦悩とともに―臨床宗教師の活動とその現場より」と題して開かれ、日本臨床宗教師会認定臨床宗教師の高橋悦堂(えつどう)さん(宮城県栗原市・普門寺副住職)と、米沢市立病院緩和ケアチーム臨床宗教師の妻鳥紘明(めんどりこうめい)さん(米沢市・松原寺副住職)が講師を務めた。
高橋さんは、臨床宗教師の生みの親とも言われる在宅緩和ケア医の故・岡部健医師と出会い、「死と向き合い苦悩する人々の心に、医療スタッフだけでは応えきれない。宗教者も緩和ケアチームの一員となってほしい」と言われ、傾聴活動を始めたと紹介。
東北大の臨床宗教師養成講座の指導者として育成にも携わり、「これからの宗教者に求められることの一つに、地域との連携がある。それぞれの宗教で脈々と受け継がれてきたことを資源として、地域に還元する役割がある。在宅緩和ケアでも要員の一人として多職種協働の一員に加わっていくことが必要になってくる」と述べ、宗教者として医療現場で患者の心のケアを担うことの意義を強調した。
鶴岡市の善寳寺で修行経験があり、2019年から米沢市立病院で傾聴を通して患者と対話を続けている妻鳥さんは、胸に迫ったという患者の心情の吐露や言葉を紹介。「病気を機に人生観が変わったり、死への絶望と治療の希望の狭間で深く悩んだりと、患者さんの苦悩は多様。心の奥底にある感情を紡ぎだすように話す患者さんもいる。最期の思いを誰かの心へとつなげる。臨床宗教師は、そうした役割も担っている」と参加者に語り掛けるように話した。
市民公開講座には約200人が参加。講演に先立ち、緩和ケアサポートセンター鶴岡・三川センター長の鈴木聡鶴岡市立荘内病院長が、緩和ケアと「庄内プロジェクト」について説明した。