2023年(令和5年) 3月31日(金)付紙面より
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遊佐町沖での洋上風力発電事業の推進を図る法定協議会(座長・吉村昇東北公益文科大学事顧問、構成員13人)の第4回会合が29日、遊佐町のパレス舞鶴で開かれた。想定している着床式風車の設置による漁業操業や船舶航行などへの支障は及ばないと判断し、吹浦漁港南側と酒田市境間の海岸線から沖合約4キロまでの約4131ヘクタールを、事業をさらに一段階進める「促進区域」に指定することに異存はないとする意見取りまとめ案に、全会一致で同意した。これにより、国は発電事業者の公募に向けた促進区域指定の手続きに入る。
同協議会は昨年1月に設置。経済産業省、国土交通省、県の各担当職員、遊佐町長、県漁協役員、海・内水面両漁業者、学識経験者らで構成し、事業実施に向け協議を行っている。
この日は、オンラインを含め12人が参加。今秋にも想定される公募を経て決まる事業者に▽協議会の意見を尊重して発電事業を実施する▽地方創生にも資する発電事業の早期かつ確実な実現に努める▽得られた利益の地域還元を目的に今後設置される基金に出捐(しゅつえん)する―ことなどを課す意見取りまとめ案を国と県の担当者が説明した。
議論になっていた風車の設置場所は、漁業者の意見を取り入れて海岸線から1カイリ(1852メートル)以上、離すことにした。
時田博機遊佐町長は「町として一貫して述べてきたさまざまなリスクへの対応を取りまとめ案に入れてもらえた」と賛意。県漁協理事で漁業者の伊原光臣さん(同町白木)は「町内の漁業者と、取りまとめ案に同意すると確認した。ただ漁業への影響は予測が難しい。漁業調査は継続して実施してほしい」と求めた。
県鮭人工孵(ふ)化事業連合会会長理事の尾形修一郎さん(同町枡川)は「組合でも激論を交わし『地球温暖化をこのままにしていいのか』という声が出て、私どもは(風力発電事業との)共存共栄の道を選ぶことにした」と主張。県漁協専務理事の西村盛さんは「地元漁業者の考えを尊重する。ぜひ地元と“伴走”してくれるような情熱を持った事業者が選ばれてほしい」と要望した。
これらの意見に対し、資源エネルギー庁の担当者は「事業先進地では『地元と一緒になって』というより『地元の人になって』との意識で事業が進められている」と紹介。県は「しっかりサポートしながら地元と一緒になって(事業進展に)頑張っていく」と述べた。