2023年(令和5年) 5月13日(土)付紙面より
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鶴岡市に縁のあるバイオリニスト・中村ゆかりさん(東京都)が昨年9月に都内で開いたリサイタルが、音楽雑誌「音楽の友」で2022年のクラシックコンサートベストテンに選出された。39人の音楽評論家・記者による選考で、中村さんは「トップテンに選ばれると、より良い演奏をしなければならないという責任が伴う。さらに質の高い、皆さんに喜んでいただける演奏を目指して頑張りたい」と話している。
中村さんの父親は同市出身の実業家・故中村信雄さん。そうした縁から中村さんは鶴岡を「心の故郷」と思い、鶴岡でチャリティーコンサートを開くなど、庄内の音楽文化振興にも貢献している。桐朋音楽高校1年の時に渡欧し、パリ国立高等音楽院、ジュネーブ音楽院、ベルン音楽院で学んだ。「イタリアの巨匠」と言われるピアニストのブルーノ・カニーノ氏と何度も共演するなど欧州と日本で活躍している。
「終わりのない祈りによせて」をタイトルにした昨年のリサイタルは9月12日に東京文化会館で開催。サン=サーンスやバッハ、ベートーベンなどの作品を演奏し、藤井一興さんがピアノを務めた。評論家からは「実り多き円熟期に明らかに足を踏み入れた」「本物のヨーロッパ音楽のエッセンスを体得した数少ない日本人バイオリニスト」「『楽器をたっぷり鳴らせる見事な運弓法から生まれる甘美でふくよかな音色』を充分に披露し聴衆を魅了」など絶賛された。
コンサートベストテン2022は、21年12月から昨年11月までの1年間の国内の演奏会が対象で、「音楽の友」の今年2月号で発表された。選ばれた10の演奏会には、NHK交響楽団の定演や東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートなどがある。
ベストテンに選出されたリサイタルを振り返り、中村さんは「世界的な新型コロナウイルスの感染、ウクライナへの凄惨(せいさん)な侵攻が起こり、世界中の人々の心に暗い影を落としていた。宗教や言葉は違っても祈る気持ちは世界共通と思い、少しでも希望の光を届けたいと、私自身の集大成として祈りを込めて演奏した」と話した。
中村さんは今月14日、鶴岡市の大山地区出身者でつくる東京尾浦会の総会に来賓として招かれ、ツィゴイネルワイゼンを演奏する。9月27日には都内で、カニーノ氏との共演によるコンサートも予定されている。