2023年(令和5年) 7月9日(日)付紙面より
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旬を迎えた酒田市産「庄内砂丘メロン」が、台湾のスーパーマーケットで販売されることになり7日午後、現地に向けて出発した。今月14日(金)から台中市の日系高級スーパー・裕毛屋に陳列される予定で、「庄内砂丘哈密瓜(メロン)」と記載されたポップも完成。栽培を手掛けた生産農家の早坂央さん(41)=浜中=は「酒田のおいしい果物を多くの台湾の人から知ってもらいたい」と話している。
メロン輸出は、同市の観光地域づくり法人・酒田DMO(荒井朋之理事長)と早坂さんが取り組んだもの。同法人は昨年10月下旬、台中市で観光プロモーション活動を展開し、観光PRを担う「さかた観光交流マイスター」の酒田舞娘(まいこ)と共に裕毛屋にも出向いて酒田の食や観光をアピール。店内は舞娘と一緒に写真に納まろうという買い物客でにぎわった。
同法人はこの縁を生かし、裕毛屋を運営する裕源(神奈川県厚木市)の謝明達会長に酒田の食の魅力を積極的にアピール。今年4月、早坂さんのメロン栽培用ビニールハウスを視察した謝会長は「糖度が17度もあり、これは十分な付加価値。台湾の人も必ず喜んで買ってくれる」と、その場で500個をオーダーした。
早坂さんは、苗と苗の間隔を広くしたり、玉伸びを良くするため通常は4玉採れるところを3玉に減らすなど、おいしいメロンになるよう栽培を模索し、その生育状況は順次SNSにアップ。日本よりも厳しいとされる台湾の残留農薬基準もクリアした。
今回輸出されるのは検疫用、試食用を含め127ケース508個。早坂さんは「数をそろえたり、基準が厳しいなど栽培は大変だったが、やっと届けられるという思い。国内での消費がなかなか伸びない中、海外への進出に期待している」と話し、丁寧に箱詰めされたメロンを運送業者に託した。
メロンは12日(水)に空路で台湾入り。同法人によると、検疫を経て裕毛屋に陳列される頃には追熟が進み、特有の芳香が漂うという。荒井理事長は「海外輸出のノウハウを積み上げたい。高付加価値なメロンを海外に提供することで庄内砂丘メロンのブランド価値を上げ、生産者の収益向上や後継者の育成、酒田の知名度アップにつなげられたら」と話した。
同法人によると、今年10月下旬には裕毛屋で酒田の物産展「酒田フェア」が開かれるという。
2023年(令和5年) 7月9日(日)付紙面より
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母グマとはぐれ旧朝日村の山あいで保護された雌のツキノワグマが32年の天寿を全うした。鶴岡市上名川の佐藤八重治さん(80)が保健所から許可をもらって飼育してきた。名前は「クロ」。今月1日に鉄製の小屋で、八重治さんから看取られながら静かに息を引き取った。人間の年齢にすると100歳近いという。八重治さんは「多くの人に愛され、多くの人に笑顔を与えてきた。クロは幸せだったと思う。今はただありがとう、と言いたい」と話している。
保護されたのは1991年4月。地元猟友会のメンバーが見つけ、いったん動物好きの八重治さん方で保護してもらうことにした。
「元気になったらクマ牧場に引き取ってもらおう」(八重治さん)と考えたが世話をしているうちに愛情が高まり許可を得て飼い始めた。鶴岡市内の鉄工所に頼んで鉄製の小屋を制作。リンゴといった果物や春になると大好きな山菜(イタドリなど)を裏山から採って与えた。
その後、「保護されたクマの赤ちゃん」として地域の評判となり、保育園の幼児や老人クラブのお年寄りが見学に。「クロちゃんファンクラブ」も発足し会員は北海道から沖縄まで約1000人の登録者数を数えた。
そんなクロも年齢には勝てず今年2月に小屋の中で倒れた。足が悪く自ら立つことが困難となり、八重治さんが付きっきりで介護する毎日が続いた。途中、回復の兆しが見えたものの今月1日午後1時ごろ、鉄製の柵にもたれかかるようにして亡くなったという。
「人も動物も命は同じ」と八重治さんや地域の人たちなど十数人が集まりクロの葬儀をした後、八重治さんが所有する裏山の一角に埋葬した。たくさんの花に囲まれて土葬、墓標も立てた。
「クロは穏やかな性格でいつも見学に訪れた人たちを出迎えるような感じだった。腹を見せて愛嬌(あいきょう)を振りまく時もあったほど。多くの人たちから愛され、親しまれてきたことに感謝したい」。クロの墓標を見つめながら八重治さんが語った。
2023年(令和5年) 7月9日(日)付紙面より
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慶應義塾大先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授らの研究グループは7日、発熱による体温上昇がインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどによる感染症の重症化を抑制するメカニズムを解明したと発表した。体温の上昇で活性化する腸内細菌叢(そう)の働きにより、「二次胆汁酸」が増え、ウイルスの増殖や感染による炎症を抑えるという。胆汁酸に着目した新たな治療薬の開発につながることが期待される。
東京大医科学研究所の一戸猛志准教授、順天堂大大学院医学研究科の内藤俊夫教授らとの共同研究で、成果は6月30日付の英国科学雑誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」オンライン版に掲載された。
研究グループはまず、外気温や体温がウイルス感染後の重症度に与える影響を調べた。外気温が4度、22度、36度の条件下でマウスを飼育し、感染後の生存率を分析。36度で飼育したマウスは体温が38度を超え、14日間の生存率100%と抵抗力が高かった。餌などを変えた検証で、発熱で温められた際の腸内細菌叢の活性化が重要であることをつかんだ。
抵抗力の高かったマウスの血清サンプルを使ったメタボローム解析で、肝臓から出る「一次胆汁酸」と、腸内細菌で変換される「二次胆汁酸」の濃度が高いことが判明。抵抗力が低かったマウスに二次胆汁酸を与えると、感染後の生存率が改善することも分かった。
また、新型コロナの軽症と中等症の患者の血漿(けっしょう)中の胆汁酸を解析し、軽症より中等症の患者の方が胆汁酸の一種の濃度が低いといったことも明らかにした。
研究グループは今後、高齢者がインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスで重症化しやすくなるメカニズムの解明や、ウイルス性肺炎の重症化を抑える治療薬の開発に向けた研究を進める予定。
2023年(令和5年) 7月9日(日)付紙面より
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SDGsを先取りした山形庄内の好事例を世界へ―。山形大学(玉手英利学長)の「留学生科学技術体験プログラム」が庄内を中心に行われた。ベトナムの短期留学生が講義や実習を通し、「誰一人取り残さない」をキーワードに、庄内の公益の精神文化を学んだ。
日本で初めて学校給食を始めたとされる佐藤霊山など庄内の先人の取り組みを留学生に伝えようと企画。今回は大学間交流協定を結んでいるベトナム国立農業大学(ハノイ)の学生5人が参加した。
プログラムは3日から始まった。このうち6日、酒田市浜中の八重浜近くのクロマツ林で行われた野外実習ではベトナム留学生が、江戸時代に庄内の先人が貴重な私財を投じて整備したクロマツ林の歴史と砂防の役割について学んだ。講師として参加した山形大学の林田光祐副学長は「風害や塩害から守るクロマツ林のおかげで庄内砂丘の農業が成り立った。庄内にとって大きな恩恵を受けたといえる。先人が築いた大切な遺産を後世に残していかなければならない」と話した。
参加したミン・ダンさん(21)は「クロマツ林の役割について知り、とても興味が湧いた。いろいろなことを学び、有意義な留学経験にしたい」と語った。
7日は文化体験として国宝に指定されている鶴岡市の羽黒山五重塔を視察。山大准教授を講師に「観光消費と精神文化」の講義を受けた。5人は8日に帰国。
2023年(令和5年) 7月9日(日)付紙面より
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鶴岡市の海岸部で7日、大規模地震による津波発生を想定した情報伝達訓練が行われた。小中学校の児童生徒や地域住民たちが有事の際の対応を確認した。
鶴岡市では、1993年の北海道南西沖地震を教訓に94年度から毎年、防災行政無線を使った一斉津波情報伝達訓練を実施している。今回の訓練は午後2時に日本海東縁部を震源とするマグニチュード7・7、震度7の地震が発生し、大津波警報が発令されたという想定で実施され、同市内海岸部の自治会や小中学校26団体合わせて約1600人が参加した。
このうち湯野浜小学校(八渡宗一郎校長、児童92人)では訓練の津波警報サイレンが鳴った後、全校児童は学校から400メートルほど北の高台(海抜約23メートル)を目指した。
市津波ハザードマップによると、湯野浜には地震発生から最速で11分後、最大約11メートルの津波が来ると想定されている。同校は海抜7・9メートルの地点にあるため、地震発生から11分以内に海抜13・4メートル以上の高台に避難する必要がある。今回の訓練で全員の避難が確認されるまでにかかった時間は10分18秒だった。
5年の黒井悠雅君(11)は「津波が本当に来ていると思って逃げた。毎回本番だと思って訓練すれば、万が一の時も落ち着いて行動できると思う。遅れている低学年の子がいたら助けてあげられるようこれからも訓練を頑張りたい」と話した。