2023年(令和5年) 8月23日(水)付紙面より
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今月10日夕、鶴岡市鼠ケ関の海水浴場で小学生女子児童1人が溺れた事故で、児童を救助した余目一小5年、剱持柚夏(ゆずか)さん(11)=庄内町猿田=が19日、庄内町の余目第一まちづくりセンターで本紙の取材に応え、「初めは泳ぐ練習かなと思ったけど、近くに行ったら沈んでいく感じで、練習じゃないなと思った。同じくらいの子どもだったから救助は怖くなかった。助かって良かった」など当時の緊迫した様子を話した。
酒田海上保安部などによると、10日午後5時20分ごろ、鶴岡市鼠ケ関の海水浴場「マリンパークねずがせき」で、遊泳中の栃木県日光市の児童(10)が溺れ、近くを泳いでいた柚夏さんが救助。駆け付けた鶴岡市消防本部の救急隊に引き継いだ。
児童は家族4人で海水浴に来ており、1人でシュノーケルの練習中、シュノーケル内に海水が入り、溺れたとみられている。現場は砂浜から約5メートルの地点で、水深は約1メートル。事故当時、波はなかったという。
母親の幸さん(34)らと取材に応じた柚夏さんによると、当日はいとこらと3人で海水浴に来ていた。柚夏さん自身も今年5月ごろから泳ぎの練習を始めたばかりで浮き輪と足ひれを着けて泳いでいたという。児童とは最初2メートルほど離れていたが、徐々に近づき「ちゃぱちゃぱという音がした。近づいてみるとシュノーケルが外れ、沈んでいく感じだった。首と腰を持ってそのまま泳いで砂浜まで運んだ。『大丈夫ですか』と声を掛けたが、咳き込んでいて反応がなかった」(柚夏さん)。
この間約5分。その後、駆け付けたライフセーバーが児童に水を吐かせた際、「小さい声で『ありがとう』って言ってくれた」(同)。柚夏さんは心配で救急隊が来るまで近くで待っていたという。
幸さんの元には19日に児童の父親から「5日間入院したが、後遺症もない」などお礼の電話があったという。柚夏さんは「親も子どもから目を離さない。子どもも深いところに行くときには親から離れないことが大事」など事故を通して学んだことを話していた。
2023年(令和5年) 8月23日(水)付紙面より
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酒田市は21日、いわゆる「ビッグデータ」を活用した先進的な取り組みの展開に向けて、東北公益文科大学(同市、神田直弥学長)、ホームセンター「チャンピオン」(同市、高橋芳秋社長)、ビッグデータプラットフォームを運営する「True Data」(トゥルー・データ、東京、米倉裕之社長)と「実データを用いた実践的データサイエンス教育に関する協定」を締結したと発表した。実際の購買データなどを活用して公益大生が学びを深めるなど、産学官連携による実践的教育の機会を創出することでデジタル人材の育成を図る。
市とトゥルー・データは2019年6月、地域活性化に関するパートナーシップ協定を結んだ。市産業振興まちづくりセンター「サンロク」が窓口となり、市内企業の販路開拓や人材育成などで支援を受けるとともに、市側は各種アンケートなどに関するオープンデータを提供し、大手企業の実証実験などに協力している。これに加え今回、産学官連携による地域デジタル人材の育成、DX(デジタル変革)による地域事業者の生産性向上を目指し、4者で協定を結んだ。市は丸山至市長が会長を務める市産業振興まちづくりセンター運営協議会として参画、全体の調整など担う。
締結は今月16日付。協定書によると、より実践的なデータサイエンス教育の実現に向け、トゥルー・データ、チャンピオン、サンロクは公益大に対して実データ、解決が必要な課題を提供。公益大は提供を受けた実データ、課題を教育活動に用いて分析を行うとともに結果を報告する、としている。
協定に基づき公益大では10月3日(火)、2、3年生を対象にした、神田学長によるプロジェクト型応用演習「POSデータで売り場改善」を開講する。履修学生は年末年始を除く来年2月8日までの間、チャンピオン酒田店の購買データ(ID―POS)、トゥルー・データの生活者ビッグデータを分析するとともに、同店を視察し、年末商戦における「掃除用品」の売り上げ増に向けた「売り場づくり」を提案。実証実験を行い、その効果を検証する。
2023年(令和5年) 8月23日(水)付紙面より
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「第13回高校生バイオサミットin鶴岡」の決勝が21、22の両日、鶴岡市先端研究産業支援センター・レクチャーホールで行われた。全国各地と海外から56人の高校・高専生が参加し、研究の成果と計画の2つの部門で口頭発表。地元庄内地域の高校生も決勝の研究作品に選ばれ、それぞれが取り組みを堂々と発表した。
慶應義塾大先端生命科学研究所と県、鶴岡市が実行委員会をつくり、2011年から毎年、夏休みに開催している。今回は書類審査を経て、24都道府県とカナダから応募された95点(62校175人)が1回戦に進んだ。今月4日にオンラインによるライブプレゼンテーションがあり、成果発表部門20点、計画発表部門13点が決勝発表に選ばれた。
21日の開会式で、慶應先端研の荒川和晴所長があいさつし、「サイエンスの楽しみは議論することにもある。この機会に全国の仲間や研究者とさまざまな意見を交換して横のつながりをつくり、皆さんにとってこれからの糧になる大会にしてほしい」と激励した。初日は成果発表部門の決勝が行われ、高温によるカブトムシの羽化の時期のずれや、鶏卵の殻の成分特性を活用したPM2・5吸着剤開発の研究、シロアリの誘引物質の研究などを個人やグループで発表。先輩たちの研究を引き継いで年数を重ねて研究内容を高度化したり、これまで明らかになっていなかった物質の特定に至る研究成果もあり、質疑応答で審査員を務めた慶應先端研や鶴岡高専、研究機関の研究者らから「興味深く素晴らしい研究だ」「こちらが勉強になる」といった評価の声が相次いだ。
ダニが雄を雌と勘違いする「性誤認」の研究を発表した鶴岡北高3年の工藤真由美さん(17)は「ネコの耳の疾患を研究する中でダニに興味を持った。決勝発表は初めてでとっても緊張した。他の発表や審査員との質疑応答はとても刺激になる。全国の仲間と積極的に交流したい」と話した。
22日は計画部門発表の決勝が行われ、酒田東高1年の後藤心さんが「ファブリー病に関する新規治療法確立の検討」、同校2年の菅原光貴さんが「微生物の力でポリ乳酸から電気を作る」のテーマで取り組みを発表。荒川所長の講演とラボツアー、慶應大の学生・大学院生のプレゼンテーション、参加者による意見交換会なども行われた。最終日の23日に両部門の審査結果が発表され、表彰式が行われる。
2023年(令和5年) 8月23日(水)付紙面より
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酒田市長選は初の無投票で、前副市長の矢口明子氏(56)が初当選した。女性市長誕生も同市政上初。戦後の同市長選は保守対革新共闘、保守分裂選挙などで市を二分する選挙戦が続いたが、今回は過去に相対してきた市議会の二つの保守系会派が一本化した。人口減少対策と経済活動立て直しのため大同団結で難局を打開しようということであろう。
しかし矢口氏の無投票当選には、積極的信任もあれば、今後4年間の市政を担う市長を決めるに当たって、選挙による選択をできなかったことを残念に感じた市民もいたのではないか。その意味で、矢口氏は市政を担う抱負と進め方を市民に説明しながら、市民に寄り添う姿勢に重きを置かねばならないことになる。
◇ ◇
市民は選挙戦を通じて酒田の将来像への取り組みを聞くことができなかった。ただ、矢口氏が6月1日に立候補を表明した後、さまざまな場所で語ってきた政策では(1)若者の仕事創出(2)誰もが主役の市政(3)市民目線の行政―などを強調してきた。中でも矢口氏が取り組まなければならない喫緊の課題は人口減少に歯止めをかけること。
酒田市は2005年、旧平田・松山・八幡と合併、新市人口は約11万8200人に増えたが、今年6月30日時点で9万6466人へと、約2万1700人も減った。人口減少は酒田市に限ったことではないが、人口は自治体の活力のバロメーターとも言われる。異常なスピードで人が減る原因を探り、その打開策を講じなければならない。矢口氏の政治力が問われるところだ。
今回の市長選は、丸山至市長が2期限りで退任することに伴うもの。無投票は避けたいとの動きもあったとされるが、市議会保守系会派が一本化した布陣に、対抗馬を立てるのは難しかったようだ。矢口氏は東北公益文科大学教授から副市長に就任、7年間丸山市政を支えた。市政運営には精通しているとはいえ、市長に就いて自らの手で市政を担うとなれば大きな決断力を求められる場面もある。
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JR酒田駅前の交流拠点施設「ミライニ」がオープンし、山居倉庫周辺の整備で観光振興に期待がかかる。一方、街の商業の核だった旧清水屋デパートが閉店したままで中心商店街の活力低下が続いている。市民が待ち望んでいるのは「中町の再びのにぎわい」。それによって魅力あるまちづくりにつながれば、若者の定着にもつながる。
脱炭素社会に向けた洋上風力発電導入が検討され、海藻に二酸化炭素(CO2)を吸収させるブルーインフラ実証実験も酒田港で行われている。酒田市は「再生可能エネルギー循環都市」を目指している。その優位性を秘めた酒田市政を担う、初の女性市長への期待感も大きい。矢口氏には市民の声に耳を傾け、女性の視点に立ち、堅実と挑戦的な市政に向かってもらいたい。
2023年(令和5年) 8月23日(水)付紙面より
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芳賀さん郷土愛を形に 「私の鶴岡物語まだまだ続く」 鶴岡市などに寄付金
鶴岡市山王町の町屋を改修し、友好都市・東京都江戸川区との“友好の館”として開設された「山王町 江鶴亭」の開設10周年を記念する祝賀会が21日、東京第一ホテル鶴岡で開かれた。鶴岡市出身で江鶴亭亭主の芳賀敏和さん(77)=江戸川区在住=が、ゆかりのある庄内や江戸川区の知人友人に「これからも両都市の友好と絆が深まることを願う」と感謝を伝えた。
芳賀さんは旧羽黒町手向出身。若くして古里を離れ、江戸川区を拠点に運送会社やタクシー会社、倉庫業など手広く経営し成功を収めた。戦時中の学童疎開を縁に、1981年に友好都市の盟約が結ばれた鶴岡市と江戸川区の友好をさらに深めてもらおうと、2013年に江鶴亭を開設。展示やミニコンサートの会場として市民に親しまれている。
また、同市鳥居町の親類の家を改修して08年に「鳥居町花梨亭」を開設したほか、19年には山王通り商店街の旧菅原イチローヂ商店のリニューアルにも携わった。いずれも私財を投じて土地や建物を購入するなど、郷土愛と地域貢献への思いが強い。
祝賀会には江鶴亭の開設や運営に関わってきた人や利用者、芳賀さんの知人など100人余りが出席。江戸川区からは斉藤猛区長や区議、経済団体関係者合わせて約30人が参加した。
初めに発起人を代表して庄交コーポレーションの國井英夫社長が「鶴岡への熱い思いで私財を投じて地域活性化に尽力してくれる芳賀さんに感謝し、両都市の友好がさらに深まることを願う」とあいさつ。続いて芳賀さんが古里鶴岡市と長く住み続けている江戸川区、古里の文化を守っている致道博物館へ、それぞれ100万円を寄付した。
来賓祝辞や荘内藩甲冑(かっちゅう)研究会による祝いの演劇上演の後、芳賀さんへ祝いの花束や記念品が贈られた。これに対し芳賀さんは「このような素晴らしい催しを開いてもらえたことに感謝申し上げる。才のない自分だが周囲の人たちに恵まれた。私の“鶴岡物語”は最後のページまでまだまだ続きそうだ」と謝辞を述べた。
その後、乾杯し江鶴亭の節目の年を祝うとともに、両都市の友好と絆を深め合った。
友好都市の相互交流再び 斉藤江戸川区長ら鶴岡市表敬
鶴岡市の友好都市・東京都江戸川区の斉藤猛区長(60)が21日に来鶴し、鶴岡市役所を表敬訪問した。皆川治市長との懇談の中で斉藤区長は「コロナ禍が明け、以前から続けてきたスポーツや文化など市民、区民相互の交流を復活させたい」と述べた。
斉藤区長は同市の東京第一ホテル鶴岡で同日夜に開かれた「山王町 江鶴亭」開設10周年祝賀会に出席するため来鶴した。市役所には江鶴亭亭主の芳賀敏和さん(77)と共に訪れ、皆川市長や阿部真一副市長と懇談した。
皆川市長が「学童疎開を縁とする江戸川区と鶴岡市の交流には、歴代区長や芳賀さんからご尽力いただいた。改めて感謝申し上げる」、斉藤区長が「多くの市職員から出迎えていただき心から感謝している。新型コロナの規制緩和を機に、市民と区民の交流を復活させたい」、芳賀さんが「江戸川区と鶴岡市の友好の館・江鶴亭の開設からあっという間に10年が経った。今後も両者の友好のため、できる限りのことを努めたい」とそれぞれあいさつした。
その後、鶴岡シルクのスカーフなど特産品を交換し合った。
2023年(令和5年) 8月23日(水)付紙面より
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鶴岡市立上郷小学校の6年生男子3人で結成した「チーム上郷」が、自律型ロボットによる国際的なロボットコンテスト「WRO Japan2023」全国大会に出場する。3人は全国大会に向けて猛練習を重ねており、「全国の舞台を思い切り楽しみたい」と意欲を高めている。
WRO(World Robot Olympiad)は、参加者の子どもたちがそれぞれロボットを製作し、プログラムを組んで自動制御の技術を競うコンテスト。国際大会も開かれており、科学技術を身近に体験できるだけでなく国際交流も行われる。
チーム上郷のメンバーは山戸田碧希(あおき)君(12)、長谷川瑠泉(るい)君(12)、長谷川煌(きら)君(11)。3人は鶴岡工業高校が実施しているロボット製作の講習会に参加し、同校教員のアドバイスを受けながら機体を製作し、ロボットが稼働するためのプログラムを組み上げた。
7月30日に同校で開かれたWRO山形予選会の「ROBO MISSION・ミドル競技エレメンタリー部門」に出場し、同じ鶴岡市の小学生チームと全国出場を懸けて対戦。両チームとも100点満点の好成績で、チーム上郷は全ての工程を終えてゴールするタイムがわずかに速かった。
全国出場決定後、3人は地元の上郷コミュニティセンターで連日、ロボットの稼働試験と調整に取り組んでいる。競技は2・4メートル×1・2メートルのステージで、4カ所にある4色の船のいずれかに置かれたブロックを、ステージ端にある同色のスペースへ運ぶ。さらにステージ内に配置されたクジラ型のブロックを逆側にあるいけすへ運び、スタート地点に戻ってゴールとなる。
ロボットは超音波センサーと色の識別センサーを搭載しており、ステージに描かれたラインやブロックの位置と色を判断し、操縦なしの自律で動くタイプ。競技者の子どもたちは、「ロボットのセンサーが正確に、素早く運搬物を確認できるか」や「移動が正確にできるか」など工夫を凝らし、アイデアを出し合いながらプログラムを調整する。
チーム上郷はお盆時期の13日から3日間、朝から夜まで上郷コミセンで稼働試験と調整を繰り返し、合宿形式で全国大会に備えた。保護者が稼働するロボットの様子を動画で撮影し、「ここの動きがおかしい」「もっと速くできる」と改良点を話し合いながらパソコンでプログラムを修正するなど、真剣に取り組んでいる。
全国大会を目前に、山戸田君は「みんなで工夫したことを生かし、しっかりと高得点を狙いたい」、瑠泉君は「負けたチームの分も頑張る。タイムをもっと縮めて優勝したい」、煌君は「県大会はぎりぎりで勝てた。相手に差をつけて勝てるようなプログラムを作りたい」とそれぞれ抱負を述べた。
全国大会は今月26日(土)、東京都立産業貿易センター浜松町館で行われる。