2023年(令和5年) 1月22日(日)付紙面より
ツイート
おさい銭を福祉に役立てよう―。鶴岡市鳥居町の「禅中橋」のたもとにある石碑のさい銭箱が市民の善意でいっぱいになり、さい銭箱を備えた上野盛一さん(73)=鶴岡市鳥居町、上野鉄工所社長=が20日、市社会福祉協議会に総額8537円を寄付した。社協では「子ども食堂」の支援に有効活用する。
内川に架かる禅中橋はかつて禅中和尚が現在の鳥居町と大東町を渡し船で往来したことを不便に思い、托鉢(たくはつ)で集めた資金で1820(文政3)年に橋を架けたと伝えられる。和尚は翌年、82歳で他界。その後、間もなくして橋のたもとに鳥居町の住民が和尚の功績をたたえる石碑を建立した。石碑には「無限禅中贈和尚(むげんぜんちゅうおしょうにおくる)」「文政六癸未年六月健之 鳥井川原連中(ぶんせいろくみずのとひつじのとしろくがつこれをたつ とりいがわられんじゅう) 」と刻まれている。橋は1973(昭和48)年、コンクリート橋に架け替えられた。土に埋もれかけた石碑を掘り起こし、当時の荘内文化財保存会が標柱版を設置した。
禅中和尚は現在の山王町にあった米屋「八木屋」の7代目。天明の大飢饉では家業が傾くほど民衆に米を無償提供し、飢餓から救う慈善活動を行った。家督を長男に譲って出家したものとみられる。
近くに住む上野さんの父親で故・盛さんが30?40年ほど前、石碑の前に雨ざらしでお金が置かれることからステンレス製のさい銭箱(縦25センチ、横15センチ)を作って備え付けた。近所の人たちのほか、散歩がてらの市民、県外観光客も訪れ、おさい銭を投じているという。
年明け早々に「さい銭箱が満杯になってお金が入らない」と市民から上野さん方と市役所に電話があり、鳥居町南町内会の板垣博会長(69)に相談。「禅中和尚の精神に沿って社会貢献につながる団体に寄付しよう」と社協に贈ることにした。さい銭箱に入った硬貨を数えたところ500円玉が2枚、100円58枚、50円9枚、10円105枚、5円26枚、1円玉は107枚あった。
上野さんは「市民の気持ちが込められたおさい銭なので、最初はどうしようかと戸惑った。市民と禅中和尚も世の中のために使われることになって喜んでくれると思う」と笑顔を浮かべた。
板垣会長は「1823年に石碑が建立されてから、くしくも今年がちょうど200年目。禅中和尚が市民の気持ちを社会のために―と引き寄せてくれたのかもしれない。今月下旬の町内会だよりに、これまでのいきさつや寄贈額を明記し市民にお知らせしたい」と話した。
善意を受け取った市社会福祉協議会の山木知也会長は「長い年月をかけて集まったおさい銭。世の中のために尽力した禅中和尚への感謝の気持ちが込められていると思う。子ども食堂の食材購入やフードバンクの食糧支援に大切に使いたい」とお礼の言葉を述べた。
2023年(令和5年) 1月22日(日)付紙面より
ツイート
酒田市シルバー人材セ
日中一時支援事業
豊富な知識・経験を生かし地域住民の生活支援などに携わる公益社団法人・酒田市シルバー人材センター(土井一郎理事長)は、平日に比べて手薄になっている土曜、祝祭日に在宅障害児を預かる「日中一時支援事業」を新たに開始。同市相生町二丁目の同センターで21日、「きらっと」と名付けた拠点施設の開所式が行われた。シルバー人材センターが日中一時支援事業を担うのは全国初という。
市健康福祉部によると、市内には現在、障害児を預かる「放課後等デイサービス」が8カ所あるものの、利用は主として平日のみで、土曜や祝祭日の支援は一部にとどまる上、既に定員で埋まっている状況という。冠婚葬祭や病気といった理由で、家庭での介護ができなくなった際の施設確保は喫緊の課題になっていた。
このような状況を踏まえ、市と相談支援事業所などは昨年、支援補助のためデイサービスへの会員派遣実績がある同センターに対して日中一時支援事業運営を打診。土井理事長はじめセンター役職員が検討を重ね、元保育士、障害者施設勤務経験者も多く会員として在籍していることから同センター2階部を活用し、「きらっと」を開設することにした。
この日は関係者とセンター役職員・会員が出席。土井理事長は「会員がこれまで培ってきた豊富な知識や経験を生かし、利用者の笑顔・個性がきらっと光る施設にしたい」とあいさつ。同部の白畑真由美部長は「多様な社会参加の好事例になることに期待する」と祝辞を述べた。この後、関係者がテープカットし開所を祝った。
同センター事務局長の高橋純さんが「きらっと」管理者となり、会員5人と共に運営。開所は土曜と祝祭日の午前8時半から午後5時15分まで。利用定員は10人。相談室、静養室も完備しており、基本的生活習慣の確立、社会性の発達支援に当たる。問い合わせなどは「きらっと」=電090(2415)1096=へ。