2023年(令和5年) 2月11日(土)付紙面より
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コロナ支援送料無料システム
新年度継続へ顧客新規開拓目指す
出羽商工会
南庄内の特産品を全国に販売する出羽商工会(本所・鶴岡市大山、上野隆一会長)の「出羽ふるさと応援便」が2年連続で2000セット(1セット3000円)を売り上げた。新型コロナウイルスの影響を受けた地域経済の支援策として始めた送料無料のシステム。スタート当時の販売実績は約800セットだったが今では倍以上の2000セットを超えるまでになった。櫛引地域で収穫したフルーツや、旬を迎えた「寒だら」が人気商品という。出羽商工会の担当者は「応援便は新年度も継続する方向で考えている。今後は新しいお客さんを開拓することが目標」と話している。
ふるさと応援便は2020年度に「夏」と「秋冬」の2便を設定してスタートした。21年度は「夏」「秋」「冬」の3便に増やした。顧客は首都圏などに住む庄内出身者が中心。コロナ禍で故郷に戻れない人のために「ふるさとの懐かしい味を届けよう」「南庄内の特産品を贈答用として利用してもらおう」と各ふるさと会にパンフレットを送り注文を募った。2年目からネットショップも始め、顧客の新規開拓を目指している。
出羽商工会がまとめた応援便の販売実績によると、スタート当時の20年度は781セット、21年度は3倍以上となる2847セット、22年度は2055セットを売った。今年度は昨年度より販売数が落ちたが申込期間を短縮したほかコロナ禍の行動規制が緩和されたことが要因とみている。
冬便の人気商品は「庄内浜タラ鍋セット」や保存がきく「鼠ケ関漁港干物セット」、完売となった「八乙女名物天然モズクのしゃぶしゃぶセット」など。夏と秋便は「庄内ラ・フランスとりんごセット」「庄内柿と新米つや姫セット」が売れ筋となっている。
担当者は「お客さんからは『地元人気店のラーメンを即席タイプにして売ったら』という意見も受けている。今後も南庄内の特産品が全国に広まり、注目されるよう努力していきたい」と話し販路の拡大を目指す。
2023年(令和5年) 2月11日(土)付紙面より
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20年ぶり本狂言「昔談柄三荘太夫」
少年歌舞伎おなじみ「白浪五人男」
酒田市黒森地区に連綿と伝わる県指定無形民俗文化財「黒森歌舞伎」の正月公演が15(水)、17(金)の両日、地区内の黒森日枝神社境内で行われる。今年の本狂言は2003年以来となる「昔談柄(むかしがたり)三荘太夫(さんしょうだゆう)」。地元・黒森小児童による少年歌舞伎「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」の「稲瀬川勢揃の場(通称・白浪五人男)」とともに上演する。
黒森歌舞伎は約280年前から、地区民による妻堂連中(五十嵐良弥座長)が、鎮守・黒森日枝神社の神事の一環として受け継いできた農民芸能。1976年に県無形民俗文化財に指定された。正月公演は厳寒期に屋外で鑑賞するため、「雪中芝居」「寒中芝居」と呼ばれている。新型コロナウイルス感染拡大に伴ってここ数年は中止・延期が相次ぎ、昨年は10月に特別公演として実施しており、この時期の開催は2020年以来、3年ぶり。
20年ぶりの上演となる今年の本狂言「昔談柄三荘太夫」は、黒森歌舞伎以外では演じられていない珍しい演目。悪徳領主の三荘太夫、「鶏娘(とりむすめ)」と呼ばれるおさん、幼い姉弟の安寿姫と對王丸はじめ魅力的な登場人物による愛憎劇が見もので、今回は「丹後の国南山の場」「三荘太夫屋敷の場」の2幕を上演する。
正月公演は15、17日とも、午前10時から同校児童による少年太鼓、正午から少年歌舞伎。本狂言は午後1時から。鑑賞は無料。マスク着用。客席は屋外のため各自で防寒着などを準備が必要。特製弁当(料金1000円)、ます席(弁当、解説本付き。1ます定員は4人、料金1万円。1日8ます限定)もある。問い合わせなどは黒森コミュニティセンター=電0234(92)2255=へ。
一方、黒森歌舞伎「酒田公演」が来月5日(日)、同市の希望ホールで開かれる。当日は正午から少年太鼓、午後0時半から少年歌舞伎を行い、本狂言は同1時半から。演目は正月公演と同じ。入場料は前売り500円、当日700円(未就学児は無料)で、市総合文化センター事務室、市役所地下売店、希望ホール事務室、各総合支所などで扱っている。
問い合わせは黒森歌舞伎保存会事務局の市教育委員会社会教育文化課=電0234(24)2994=へ。
2023年(令和5年) 2月11日(土)付紙面より
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昨年12月、本紙が鶴岡市東栄小学校の伝統行事「獅子踊り引き継ぎ発表会」を報じていた。同小学区内の添川、東堀越両地区に伝わる伝統芸能の獅子踊りを1992年から学校教育の一環に取り入れている。藤島地域は昔から「獅子郷」といわれ、美しく勇壮な獅子踊りが伝承されてきた。そして、伝承には子どもの存在感が大きい。
庄内には▽黒川能▽山戸能▽松山能▽山五十川歌舞伎▽杉沢比山▽黒森歌舞伎―など、多くの郷土芸能が伝承されている。子どもがいなければ成り立たない郷土芸能もある。伝統を受け継ぐ担い手が減る中で、将来を背負って立つ子どもたちの役割は大きい。
藤島地域には9社の神社ごとに特徴があり、古い歴史を持つ獅子舞が伝承されている。東堀越獅子踊りが伝わる「新山神社」は源頼朝が東北平定を祈願して創建したという。添川の「両所神社」の両所神社御獅子舞は、貞亨3(1686)年、ご神体が移されたのを祝って氏子が獅子舞を奉納したのが始まり。東栄小の児童は1、2年生はバチで竹をたたいてリズムを覚え、3年生から6年生までの間に本格的に舞を習得する。その間、先人たちの思いにも触れることになる。
伝統芸能とは趣を異にするが、酒田市の新堀小学校の5、6年生が世代間交流事業で、学校田の稲刈りで出た稲わらを使って地区のお年寄りから「俵編み」を習った。昔の農家ではわら打ち仕事と俵編みは大事な仕事だった。政府に米を出荷するのに米俵がなくてはならず、男は俵編みができて一人前とみなされたという。今、米俵はなくなったが、先祖が伝統としてきた農家の仕事を知ることも、郷土愛につながる。
酒田市の「雪の能 まつやま大寒能」では、松山小の児童が「松山子ども狂言の会」による狂言を披露した。鶴岡市黒川の春日神社の王祭で子どもが演じる「大地踏み」は、地底の悪霊を踏み鎮め、地中に眠る精霊を起こすため力いっぱい舞台を踏む。能の始まりとなる大役だ。
農耕民族の日本での伝統行事・芸能は、神を敬い収穫の感謝を表す神事として受け継がれてきた。映像やAIの時代であっても“ナマ”伝統文化に触れ、さらに自ら演じることで豊かな感性が育つ。伝統芸能や祭りにはそうした力があり、子どもたちの「心を豊かにする糧になる」。酒田市の黒森歌舞伎でも同市立黒森小学校の児童が口上を披露しながら大事な役目を担う。
少子化や、若い世代の首都圏流出で地域の伝統を守る事が難しくなってきている。郷土芸能や文化は時代とともに少しずつ、しきたりや形態を変えなければならないことがあるかもしれない。それでも、子どもの頃に習い、見た伝統の情景が心に焼き付いたことが郷土愛を育み、ひいては将来の担い手になってくれることを願いたい。
2023年(令和5年) 2月11日(土)付紙面より
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伝統こけしを一堂に集めた「つるおか伝統こけしの今昔」が鶴岡市の鶴岡アートフォーラムで開かれている。
こけし職人は阿部常吉氏(1904―91年)と孫にあたる進矢氏(1937年―)、秋山慶一郎氏(1890―1964年)と息子の一雄氏(1935―91年)、本間留五郎氏(1909―74年)、五十嵐嘉行氏(1927年―)、大滝武寛氏(1882―1937年)、軽部留治氏(1890―1940年)、志田菊宏氏(1959年―)の9氏。これらの職人が手掛けた伝統こけしは収集家として知られる鶴岡市の石黒清一さんや清川屋、新庄市の「こげす会新庄」と福田院から借り受けたもので約300点を展示した。
湯温海の工房で創作活動を続けている阿部進矢氏は鶴岡にこけし作りを広めた祖父・常吉氏の型を受け継ぐ。こけしの他に動く木工玩具も紹介している。
秋山親子はどっしりとした太い胴と華やかな模様が特徴だ。60歳を前にして青森のこけし職人に弟子入りした五十嵐嘉行氏は素朴な表情と簡素な胴模様の作風で知られる。
鶴岡アートフォーラムの学芸員は「これだけの伝統こけしを展示したのは初めて。工芸ファンにとっては見応えのある展示会だと思う。阿部進矢さんを招いたゲストトークも予定しているので、足を運んでもらえれば」と話している。
ゲストトークは19日に収集家の石黒清一さん、25日に職人の阿部進矢さんを迎える。時間はいずれも午後2時から。参加は無料だが観覧券が必要。申し込みは鶴岡アートフォーラム=電0235(29)0260=へ。3月5日まで展示している。
2023年(令和5年) 2月11日(土)付紙面より
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トルコ南部のガジアンテップ付近で6日に発生したマグニチュード7・8の地震で、トルコと隣国シリアを合わせた死者数が2万人を超える中、トルコ国籍を持つ酒田市在住のイブラヒーム・ジハーンさん(64)が10日、鶴岡市の荘内日報社本社を訪れ「家も仕事も失い寒さに苦しむトルコの人たちのため、できる範囲で構わないので庄内の皆さんから支援を頂ければ」と訴えた。
家を失い寒さに苦しむ人たちへ
「庄内の皆さんから支援頂ければ…」
ジハーンさんは23歳のころアラビア人学校の教員として来日。1年半ほど後、酒田市で開かれた輸入品関連のイベントを機に同市へ移住し、周囲の協力で輸入品販売業を始めた。英語やアラビア語、トルコ語などの教室や翻訳・通訳、旅行案内にも携わり、40年余り庄内に住み続けている。
出身はトルコ・ガジアンテップ県のヌルダギで、今回の地震の震源地。発生当日の6日午後5時ごろ、ジハーンさんのもとにイスタンブールの弟から「大きな地震があった」と電話で知らせがあった。鶴岡市に来ていたジハーンさんはテレビで現地の様子を知り大きなショックを受けたという。
犠牲者は時間が経過するごとに増加し、連日のように被害の様子が報道されているが、ジハーンさんは「テレビに映るのは都市部ばかり。石造りの建物が多い地方はどうなっているのか全く分からない」と話す。
ヌルダギは10年ほど前から大学や病院、小学校など近代的な建物が増え、インフラ整備も進んだという。別の弟からの電話によると、ジハーンさんのいとこがコンクリートの建物の下敷きになり、一時は声が聞こえていたがその後、どうなったか連絡が取れていない。「ヌルダギは大きな都市ではなく、重機や救助の技術も足りないと思う。いとこは亡くなった可能性が高い」と表情を曇らせた。
トルコ地震に関連し、鶴岡市は9日から市役所本所(鶴岡市馬場町)1階ロビーに募金箱を設置。県も同日、県庁ロビーと各総合支庁に募金箱を置くとともに、県職員へ募金を呼び掛け集まった全額を日本赤十字社県支部に送る。酒田市は週明けにも市役所に募金箱を設置する予定。
こうした動きを踏まえ、ジハーンさんは「シリア難民の受け入れでトルコは日本から多くの支援をもらっており、これ以上を求めるのは心苦しいが、現地の被害のことを知ってもらい少しでも援助を頂きたい。多くのトルコ人が家も仕事も失い、難民のようになっている」と呼び掛けている。
現地では亡くなった人を埋葬することもできず、野ざらしのままとなっているという。ヌルダギは10日朝の気温がマイナス7度まで冷え込んだ。ジハーンさんは「寒いのに家もなく、食料も届いているか分からない。ほんの少しだけ庄内の皆さんから支援の気持ちを分けてほしい」と話した。