2023年(令和5年) 2月12日(日)付紙面より
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善寳寺慈照殿
五百羅漢像の特別公開
日本遺産の日(13日)に合わせた鶴岡市の「日本遺産ウイークin鶴岡」で11日、同市の「出羽三山生まれかわりの旅」「サムライゆかりのシルク」「北前船寄港地船主集落」の3つの日本遺産の関連施設の無料公開が始まった。このうち北前船関連では善寳寺慈照殿で五百羅漢像の特別公開が行われ、修復された像を拝観する市民らが訪れ、北前船にまつわる歴史的な物語に触れていた。
善寳寺境内にある「五百羅漢堂」(国指定登録有形文化財)は、170年ほど前の1855(安政2)年に落成。堂内には釈迦(しゃか)三尊像をはじめ、弟子の仏像、亡くなった人をしのぶ五百羅漢像など計531体が安置された。
漁業や海運業に関わっていた北海道松前郡の豪商が龍神を祀(まつ)る善寳寺への祈願成就のために寄進し、仏像は京都の仏師が制作。仏像群は北前船で運ばれ、安置されたという。当時の北前船航路による交流・交易と繁栄を伝える歴史遺産となっている。
同寺は傷みが目立つようになった五百羅漢像の保存修復に向け、東北芸術工科大に委託して2015年から仏像の修復プロジェクトをスタート。約20年の歳月をかけ全仏像を修復する。1体ずつX線撮影による構造の分析、堆積したちりやほこりの除去、損傷個所の補修などが行われ、本年度までに130体の修復が完了する。
本堂脇の慈照殿には、修復によって不明瞭だった彩色が現れ、制作当初に近い姿がよみがえった高さ約80センチの仏像1体、修復前のくすんだ仏像1体、五百羅漢堂発願主・寄付者3人の男性像、プロジェクトの概要を紹介するパネルなどが展示された。訪れた同市稲生二丁目の佐藤健也さん(64)と由紀さん(62)夫妻は「日本遺産ウイークを知り、興味があったので初めて来てみた。市内の近くにこんな立派な仏像群があるとは」と感嘆の声を上げていた。無料の特別公開は12日も行われる。
一方、ウイークでは13日まで「出羽三山生まれかわりの旅」関連でいでは文化記念館、「サムライゆかりのシルク」関連で松ケ岡開墾場1番蚕室の松ケ岡開墾記念館を無料公開。日没から午後8時までは松ケ岡開墾場の本陣ライトアップ、雪灯籠設置もある。
2023年(令和5年) 2月12日(日)付紙面より
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酒田市の旧阿部家(市指定文化財)で11日、恒例の小正月行事が行われ、親子連れが豊作を願う「なし団子」作りなどで伝統行事を体験した。
旧阿部家は1690(元禄3)年の創建とされる肝煎(庄屋)の住宅で、1984年に旧平田町の文化財に指定された。今年で創建333年目。同市では最古の木造建造物といわれる茅葺き屋根の古民家。小正月行事は地元住民らでつくる「旧阿部家の四季を楽しむ会」(櫻井静悟会長)が86年から実施している。コロナ禍で中止しており、3年ぶりの開催。
36回目となる今回は同市内の親子連れ30人余りが参加。参加者は初めに土間で餅つきを体験。引き続き、座敷に移動し、豊作を願って紅白の餅をミズキの枝に付ける「なし団子」作りに挑戦。子どもたちは同会会員や保護者らの指導を受けながら、丸めた紅白の餅をバランスよく枝に付けていくなど和気あいあいと作業していた。
櫻井会長は「旧阿部家で四季に合わせて年4回実施している行事の一つ。地元の文化について、楽しみながら理解を深めてもらえれば」と話した。
2023年(令和5年) 2月12日(日)付紙面より
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紅エビで地域おこし―。温海中学校(鈴木和典校長、生徒121人)の2年生が考案したオリジナル給食が10日、全校で振る舞われた。生徒たちは地域特産品メニューを堪能し、地元の良さを再発見した。
地元名物のオリジナルメニューを考案して地域活性化につなげようと、昨年7月から総合学習として取り組んできた。特産物としてまだあまり知られていない紅エビ(ホッコクアカエビ)に着目し、知名度を上げようと県水産研究所や地元生産組合の協力のもと生態や加工販売について学び、マーケティング、プロモーション方法に関しても知識を深めた。学年で調理のアイデアを出し合い、食感を楽しめるようカリカリの素揚げにし、磯の風味を生かそうとのり塩味を採用した。
集大成の給食メニューは▽鼠ケ関産紅エビの素揚げとフライドポテト▽温海産山菜のみそ汁▽白菜のおひたし▽元禄餅―の4品。みそ汁にはタケノコやワラビ、ナメコをふんだんに使い、伝統銘菓の元禄餅をデザートに添えた。
のり塩味にするアイデアを出した本間恋音(れのん)さん(14)は「総合学習を通して温海には地産地消できるおいしいものがたくさんあると再発見した。多くの人に知ってもらい、地域活性化につながるきっかけになれば」と話していた。
2023年(令和5年) 2月12日(日)付紙面より
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庄内地方を拠点に活動するブラスアンサンブル「荘内金管合奏団」が今月23日、東京都内で開かれる第4回ジャパン・ブラスバンド・アンサンブル・ナショナル・チャンピオンシップのチャンピオンシップ部門(年齢制限なし)に出場する。同大会には3年連続の出場で、今回はコロナ禍による入場制限が緩和され観客がいる中での演奏となる。
大会は英国式ブラスバンドの啓発やレベル向上を目的に日本ブラスバンド指導者協会が主催して実施している。金管楽器の小編成(室内楽)の団体による演奏を審査するもので、オーケストラや吹奏楽団のプロ契約奏者を除く全ての団体所属の金管・打楽器奏者(国籍問わず)が参加できる。
ジュニア(12歳まで)、ユース(22歳まで)、チャンピオンシップ(年齢制限なし)の3部門があり、事前録音審査を経て全国大会への出場を決定する。
同合奏団は鶴岡・酒田・三川の20―50代による五重奏編成で事前録音審査にエントリー。ロシアの作曲家ヴィクトル・エワルドの「金管五重奏曲第三番より第一楽章」を演奏し全国大会への推薦を獲得した。全国のステージでも同じ曲を披露する。
トランペット担当で出場する同合奏団事務局の加藤聡さんは「21、22年ともコロナ禍で会場が使用できず録画審査だったため、全国大会に出場した実感があまりない。今回初めて観客の入った舞台で演奏できる」と喜ぶとともに、「全国から優れた団体が集まってくる。山形代表として自分たちらしい演奏をしたい」と意気込みを見せた。
全国大会は救世軍本営山室軍平記念ホール(東京都千代田区)で行われ、チャンピオンシップ部門には同合奏団を含め全国から7団体が出場するという。
2023年(令和5年) 2月12日(日)付紙面より
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「総合学習」で学び
実践活動から考察
「郷土愛の醸成」をテーマに掲げ、酒田市平田・松山両地域の宝・魅力を探し出し、その活用策について考察してきた酒田市の東部中学校(赤塚枝美校長)の1年生による総合学習発表会「『地域の宝』コンテンツ発表会」が10日、同校体育館で行われ、学びに協力した企業・団体の関係者が見守る中、生徒たちが堂々と成果を披露した。
市中期観光戦略アクションプログラムに基づき昨年6月に設立した「酒田DMO」(同市、荒井朋之理事長)を中心に、いずれも市内のプレステージ・インターナショナル山形BPOパーク、JR東日本庄内統轄センター、ANAあきんど庄内支店、NPO法人「ひらた里山の会」、アイアイひらたを運営する「ひらた悠々の杜」の協力で、生徒たちは昨年7月以降、総合学習を活用し、これまで8回にわたって「平田・松山の宝」を探した上で、その宝をブラッシュアップする実践活動に取り組んできた。
この日は1年生76人が6―7人ずつ12班に分かれてそれぞれ発表した。平田地域にある飽海三名瀑の一つ「十二滝」の魅力を探った班は、周辺での散策ツアー、ウオークラリーの開催を提案。首都圏に住む家族連れをターゲットに、時期を降雨で流れが増す梅雨時とした上で、庄内空港やJR酒田駅にポスターを掲示する他、SNSで周知を図って集客。「自然の豊かさなど酒田の魅力を観光客はじめ多くの人から知ってもらう活動を行いたい」と述べた。
また、「レッツゴー武者行列!」のテーマで、毎年5月1日の松山まつりの中で行われる「武者行列」のPR方法について考察した班は、「酒武者(さかむしゃ)」と銘打ち、自ら甲冑(かっちゅう)に身を包んでJR酒田・砂越両駅、庄内空港を練り歩くイベントの開催を考えた。「高校生と、かっこいいものが好きな子どもとその家族がターゲット。貴重な文化・伝統を味わってもらいたい」と紹介した。
会場に集まった協力企業・団体の関係者は各班ごとにそれぞれアドバイス。講評で荒井理事長は「ぜひ実行に移してほしい」と呼び掛けた。