2023年(令和5年) 2月15日(水)付紙面より
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一般会計総額6815億7300万円
県の2023年度一般会計当初予算案が14日、県議会に内示された。一般会計予算の総額は6815億7300万円で、当初予算の規模としては過去9番目に多い。22年度当初予算との比較では32億3100万円、0・5%減となり、6年ぶりに減少した。新規事業では、東北公益文科大(酒田市)の公立化・機能強化に関する視察・調査として事業費100万円が初めて予算化され、公益大の公立化に向けた県の検討作業が具体的に動きだす。
歳出の主な内訳は、人件費が前年度当初比4・9%減の1440億7600万円で、うち退職手当が45・9%減の85億3800万円。社会保障関係経費は1・5%増の702億3300万円、県の借金返済に充てる公債費は0・2%減の878億3000万円。一般行政費は1・3%減の2888億6300万円で、内訳は貸付金が6・6%減の1206億6200万円、補助費は1・3%減の1205億1800万円、物件費は23・9%増の316億3300万円。投資的経費は8・3%増の905億7100万円で、内訳は公共事業が3・5%増の361億4000万円、単独事業は8・4%増の327億3900万円、災害復旧事業は53・3%増の99億1800万円、国直轄事業負担金は2・2%減の117億7500万円。
歳入は、県税が0・2%増の1120億円、地方消費税清算金は8・7%増の561億円、地方譲与税は0・1%減の211億1100万円、地方交付税は1・4%増の1804億円、国庫支出金は2%増の920億6400万円、繰入金は6・1%減の252億3000万円、県債は4・8%減の507億1300万円を見込んだ。
主な新規事業は、海外研修を行う40歳未満の若手医師に対する支援など医師確保対策事業に4億9233万円を計上。庄内関係では、公益大の公立化・機能強化に向け全国の公立化先行大学などの視察や調査に100万円を盛り込んだ。このほか、飛島への緊急支援物資の配備を含む防災対策推進事業356万円、庄内地区動物愛護センターの整備に係る動物愛護センター整備事業3420万円、酒田港を活用した洋上風力発電の導入を見据えた高砂埋立用護岸の整備事業2億円、水道広域化に伴う庄内地域の水道施設の最適化や経営統合などを行う水道事業運営基盤強化推進事業2322万円など。旧県立鶴岡病院(鶴岡市高坂)の解体事業については、解体費用を約13億5000万円と見込んでおり、県が2分の1相当額を負担し、解体跡地に鶴岡市が人工芝サッカー場を整備する予定。
新型コロナ対策関連は、商工業振興基金の拡充や福祉施設等への衛生用品の補助など計869億円を計上した。
一般会計当初予算は20日開会予定の2月定例県議会に上程、審議される。
2023年(令和5年) 2月15日(水)付紙面より
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「論語素読」のお手本音源
「美しい文字の書き方」動画
会の設立から活動と成果も紹介
致道館文化振興会議
鶴岡市の「藩校致道館」の教育精神を継承する活動に取り組む致道館文化振興会議(会長・橋本政之荘内日報社社長)がホームページ(HP)を開設した。同振興会議の設立や事業内容、主要事業と成果などが閲覧できるほか、「論語素読」のお手本音源や論語書道展に関連した「美しい文字の書き方」の動画を視聴することができ、致道館文化を学べるつくりとなっている。
若い世代への広報手段とするHP作成は、同振興会議の2022年度事業の一環として昨春始動。公益信託荘内銀行ふるさと創造基金の助成を受けて準備を進め、昨年12月下旬に公開した。
HPのテーマは「致道館文化をみんなのものに」。致道館文化を学べる仕組みとして、会報「抱朴(ほうぼく)」の創刊号から20号(22年1月1日発行)までバックナンバーを掲載し、各ページの閲覧が可能となっている。また、論語素読のお手本音源と合わせて「論語」などの教本のPDFデータを掲載。音源を聞きながら教本を目で追える工夫がされている。
また、主催や共催、後援を含む講演会、孔子祭講経、「致道館の日」記念講話について、それぞれの開催記録リストをアップ。このうち会報に要旨を掲載したものは、会報の号数と記載ページを表示し会報バックナンバーでの閲覧へつながるようにしている。
コンテンツの一つ「論語書道展」では、最新開催回の学年別応募数や入賞状況、特別賞入賞作品や会場風景の写真などを掲載。「美しい文字の書き方」は鶴岡書道会の指導の様子を動画にしている。さらに書道展の年度別課題を一覧で掲載しており、今後は課題の語句を選択すると読み方や意味なども分かるよう改良する。
このほか「お知らせ」コーナーでは最近の事業を紹介しており、今後は古典素読教室や親子参加型イベント、講演会などの周知、参加申し込みの手段とするなど、活用方法の拡大を検討している。アドレスはhttps://chidokan.net
2023年(令和5年) 2月15日(水)付紙面より
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トルコ南部で発生したマグニチュード(M)7・8の大地震で、隣国シリアと合わせた死者は3万5000人を超し、被災者は2300万人に達するだろうという大惨事になった。逃げる間もなく、一瞬にして人の命を奪う地震の怖さである。トルコは四方が幾つものプレートと断層に囲まれていて、1998年以降M6クラスの地震が4回も起きている。
日本も4つのプレートに囲まれている。東北・北海道沖と南海トラフで大地震の可能性が想定され、北関東から北海道沖の日本海溝、北海道沖の千島海溝沿いで想定される巨大地震では、日本海溝で19・9万人、千島海溝で10万人が犠牲になるとの想定だ。地震列島に住む私たちにとって、トルコ・シリア地震は人ごととして捉えることはできない。
庄内沖の日本海にはいずれM7・7?7・8規模の地震発生が予測されている地震空白域がある。津波が発生すれば到達時間も早く、最高水位が鶴岡市温海で16メートルに達するとの想定もある。これとは別に遊佐町から鶴岡市藤島にかけての山沿いを走る「庄内平野東縁断層帯」で、積雪期の早朝に地震が発生すれば庄内を中心に死傷者1万人超、全・半壊家屋約3万4400棟、避難者は約4万人という県の想定もある。
それにしても、トルコ・シリア地震の惨状は目を覆うばかりだ。中高層のビルが倒壊する瞬間の様子が映像で流れ、犠牲者が倒壊した建物の下敷きになった。トルコは耐震性のあるビルや建物が少ないことで被害が拡大した。地震国にとって住宅の耐震性がいかに大事であるかが分かる。
建築基準法に、現在の耐震規定が盛り込まれたのは81年。それ以前の建物は古い耐震基準で建築されており、耐震性が不足している可能性がある。阪神・淡路大震災での被災家屋は旧耐震基準で建てられていた木造住宅が多かったという。住宅の耐震性は、耐震診断を実施することで確認できる。耐震診断の方法などについては県や市町に相談し、補強が必要と判断されたら耐震改修して地震に備えることが、身を守ることになる。
政府は日本海溝などの地震で、対策を講じていれば被害を8割減らせるとしている。ハード面の対策も重要だが、日頃から避難方法を確認し、非常持ち出し用品をまとめておくことも大事な対策だ。災害は時を選ばずにやって来ることを心に刻んでおきたい。
先頃、トルコ国籍を持つ酒田市在住の男性(64)が本社を訪れ、「できる範囲での支援をお願いしたい」と呼び掛けた。23歳の時アラビア人学校の教員として来日、その後長く庄内に住んでいる。東日本大震災ではトルコから多くの支援を受けた。困った時に支援の手を差し出すのは、人としての自然の心であろう。トルコとシリアの人々に寄り添いたい。
2023年(令和5年) 2月15日(水)付紙面より
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酒田うたごえ喫茶(高橋治代表世話人)の例会が12日、酒田市の駅前交流拠点施設「ミライニ」3階研修室で行われ、会員が市内の保育園などで受け継がれてきた「山居倉庫の歌」などを元気に歌い上げた。
「酒田うたごえ喫茶」は約7年前から同市内で月1回活動している。山居倉庫の歌は、同市の小鳩保育園=同市千石町一丁目=で長らく歌われてきたもの。約30年前に童謡作曲家・峯陽(みねよう)氏が同市を講演で訪れた際、当時同園に勤めていた齊藤惠さん(74)=同市上餅山=が案内したのがきっかけという。
峯氏が「庄内弁はきれいで歌になるね」など話していたことから、同園との交流が生まれ、職員の佐藤きよ子さん(76)=同市穂積=が作詞を担当し、峯氏が曲を付けて生まれた。童謡の優しいメロディーに乗って「大きなケヤキ 石畳 山居倉庫の並木道」に「優しい風吹く春の日は可愛いアンヨで歩こうね」など四季の情景が続く。同喫茶では、山居倉庫が2021年3月に国指定史跡に指定されたのを受け、改めてこの曲を大事にしたいと歌っていくことにしたという。
この日は会員約40人が参加。「山居倉庫の歌」のほか、「酒田甚句」や「大きな古時計」など30曲を朗らかに歌い上げた。山居倉庫の歌について、齊藤さんは「子どもたちと散歩しながらできた歌。今後も長く歌い継いでいきたい」、佐藤さんは「私の青春時代は小鳩で過ごした時代。この曲を歌うと子どもたちと楽しく過ごした日々が鮮明に思い出される」とそれぞれ目を細めていた。
2023年(令和5年) 2月15日(水)付紙面より
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酒田から世界に飛躍願い
実弟の佐藤さん
相撲漫画の金字塔・バチバチシリーズ「鮫島、最後の十五日」、柔道を題材にした「いっぽん」といった名作を残しながらも2018年に他界した酒田市出身の漫画家、故佐藤タカヒロさん。実弟で、建設資機材などレンタル業を展開する「酒田レンタル」(同市こがね町二丁目)の佐藤博信社長(43)が13日、市に対してタカヒロさんの全著作と図書備品を寄贈した。作品は酒田駅前交流拠点施設「ミライニ」内の市立中央図書館に開架する。
「ミライニ」 中央図書館へ
佐藤タカヒロさんは1976年、同市生まれ。仙台デザイン専門学校卒業後に上京し、漫画家のアシスタントをしながら自らも創作活動を展開。2000年に秋田書店が制定する「第54回少年チャンピオン新人まんが賞」で準入選を獲得して、読み切り「シンクマネー」(週刊少年チャンピオン)でデビューした。幼少の頃から打ち込んでいた柔道をテーマにした「いっぽん」を04年から同誌に連載。酒田に拠点を移し09年、相撲漫画「バチバチ」の連載を開始、魅力あふれる登場人物、迫力ある取組シーンで好評を博したが、18年7月に41歳の若さで死去。176話まで進んだ「鮫島、最後の十五日」は未完のまま連載を終えた。
市美術館で一昨年9月、秋田書店、佐藤社長はじめ遺族の協力で、タカヒロさんの原画やネームなど計約90点を展示。全国各地からファンが大勢訪れ、「酒田高校柔道部」に所属する春康文の活躍を描いた「いっぽん」、主人公の鮫島鯉太郎とライバルたちの迫力ある取組が話題となった「バチバチ」シリーズの原画、漫画の設計図といえるネーム、再現されたタカヒロさんの仕事場などに見入った。
この展示を受けて佐藤社長は今回、「地元でもこれだけのことができるということを知ってもらい、酒田から世界に飛び立つ人材が育ってほしい」との願いを込め、▽「いっぽん」全14巻▽「バチバチ」全16巻▽「バチバチBURST」全12巻▽「鮫島、最後の十五日」全20巻―とタカヒロさんが手掛けたコミックス全巻とともに、ブックスタンドなど図書館用備品を寄贈することにした。
この日は中央図書館内で寄贈式が行われた。佐藤社長は「ぜひ郷土資料にしてほしい。ここ酒田から素晴らしい逸材が誕生し、世界に飛躍していくことを祈念する」とあいさつし、安川智之副市長に作品を手渡した。これを受けて安川副市長は「これらの作品を読んでもらい、多くの人から刺激を受けてもらえたら。本気で漫画に立ち向かっていた姿勢が伝わってほしい」と謝辞を述べた。
連載デビュー作となった「いっぽん」は現在、絶版となっており特に貴重な作品。「小学時代からノートに4こま漫画をよく描いていた。最初の読者は私だった」と実兄との思い出を話す佐藤社長は、酒田を拠点に描き続けたことについて「都内の生活が窮屈だったのではないか。酒田の場合、都内で作業をするよりも締め切りが1日早く、東日本大震災直後は原稿を航空便で送っていた。常に死に物狂いで描いていた」と述懐した。
中央図書館は現在、蔵書点検のため休館中。開架は点検明けの18日(土)からの予定。