2023年(令和5年) 3月1日(水)付紙面より
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鶴岡市西目で昨年末に発生し2人が犠牲となった土砂崩れについて、鶴岡市と県は27日、同市役所で対策工事に関する合同対策会議を開いた。県はボーリング調査による現場の状況把握には今後数カ月を要するとの認識を示し、その後の工事着手と完了の見通しは明らかにしなかった。現場周辺の土砂とがれきの撤去について市は、来年度中の完了を目指すとしている。市営住宅などで暮らす4世帯13人の避難指示解除の見通しも立っておらず、避難生活は長期化する。
対策工事の詳細を詰めるためのボーリング調査は7カ所で予定し、3月中には掘削を終える。地層の動きを観測する「ひずみ計」と、地下水の変動を測る水位計を設置し、観測データを収集した。推移を踏まえた上で、具体的な工事の設計に入る。対策工事は斜面のうち不安定な土砂の撤去や地下水や雨水の排水工を見込んでいる。事業費は約11億円。
会議で県庄内総合支庁の担当者は「本体工事の着手時期と完了時期は未定だが、できるだけ早い避難指示解除のため、避難世帯の住宅の裏山から優先して工事を進める」と説明した。
一方、市が実施する周辺の土砂とがれきの撤去については、市道部分の土砂約1300立方メートルは今年中に、住宅などが崩壊した部分の土砂約1万7000立方メートルとがれき約1638トンは来年3月までに撤去完了を目指す方針を示した。
会議後、皆川治市長は報道陣に対し、「対策工事の進捗(しんちょく)状況がもう少しはっきりしてくれば、避難指示の解除についても検討できる」との認識を示した。
2023年(令和5年) 3月1日(水)付紙面より
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議論が進む東北公益文科大学(酒田市)の公立化と機能強化に関し、28日に行われた県議会2月定例会で高橋淳議員(鶴岡市区、県政クラブ)が一般質問に立ち、県と庄内2市3町の間で行われてきたこれまでの検討状況、県のリーダーシップについて当局の考えをただした。
これまでの検討状況に関し小林剛也総務部長は「幅広く意見交換と議論の積み重ねを進めている。とりわけ財政負担の在り方について1月31日、県から地元市町に対し、公立化した場合に追加的に必要となる負担額の試算を共有した。さまざまな想定に基づく設置者間での負担割合のシミュレーションを準備し、3月開催の実務者会合で地元自治体と共有する」と述べた。
機能強化に関して小林部長は公益大で開かれた第1回地域連携シンポジウムに触れ、「庄内地域の将来像、公益大の在り方について活発な議論が交わされ、550人が聴講した。第2回以降に向け県外企業、外国の大使館などの参加も含め準備を進めている。公益大が『知の拠点』となることで、寄付講座や施設への支援といった外部資金も期待される。機能強化によって外部資金導入の可能性を高めていくことが公立化に向けた大きな後押しになると考える」と語った。
また、県のリーダーシップに関しては「2月の庄内開発協議会の意見交換で首長からは『機能強化よりも速やかな公立化を』『公立化の前に何を目指すかを明確化すべき』といった多様な意見が出たと聞く。県として関係自治体の意見を丁寧に聞き、調整することが求められていると考えている。県全体の発展の視点から適切なリーダーシップの発揮に努めたい」と答えた。
2023年(令和5年) 3月1日(水)付紙面より
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鶴岡市青龍寺の金峯神社(佐々木孝善宮司)で27日夜、「第33回金峯山雪灯篭まつり」が3年ぶりに行われた。来場者は灯篭にろうそくをともし、辺りをほのかに照らし出した。
雪灯篭まつりは翌28日の「山開き祭」の前夜祭。山開き祭に訪れる参拝者のため拝殿までの道を明るく照らそうと、黄金地区の住民からなる金峯山雪灯篭まつり実行委員会(菅原順委員長)が30年以上前からこの時期に名物の雪灯篭を作っている。雪の参道を多くの男女が手を取り合いながら登り、その後結ばれたことから“縁結び祭り”とも呼ばれ、カップルも多く訪れる。今回は同神社中の宮から参道にかけて高さ約2メートルの雪灯篭を100基ほど設置。イベントステージには鶴岡建設(同市泉町)が奉納した高さ約6メートルの大黒様と恵比寿様の大雪像を設け、拝殿前広場には黄金小の3、4年生が竹灯籠やろうそくを飾った高さ2メートルほど雪のオブジェも登場した。
この日は午後6時の点灯式で幕開け。大勢の参列者が雪灯篭にろうそくをともした。それぞれの願いが込められたほのかな明かりが揺らめき、辺り一帯は幻想的な雰囲気に包まれていた。
イベントステージでは黄金地区の踊り集団「黄金の舞」がよさこいソーラン、社務所では地元団体が獅子舞、天狗(てんぐ)舞をそれぞれ披露。観客からは大きな拍手が上がった。
学校の友だちと訪れた和田はなかさん(13)は「友だちとずっと仲良く一緒にいられるよう願いを込めた。縁結びのことは知らなかったので、いつか大切な人ができたらまた来たい」と話していた。
2023年(令和5年) 3月1日(水)付紙面より
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1日は高校の卒業式がある。若者の門出を祝福したい。一方、進学や就職で多くの若者が古里を離れて首都圏などへ出ていく。地方にとって何十年も繰り返されている「人口の社会減」の大きな要因だ。人口減少に歯止めをかけて増加に転じさせたい―は、地方の願いだが、国の総人口まで減少期に入った中で、東京一極集中の弊害から抜け出せるだろうか。
地方都市には地方ならではの魅力がある。鶴岡工業高校の1年生が「鶴岡を住みたい街ナンバーワンにするために―」をテーマにした探求学習で、人口を増やすには子育てしやすい行政サービスの充実が欠かせないなどとの学習成果を発表した。行政として参考となる提案もあるようだ。
都会に出ていく人口の社会減に歯止めをかけることは、地域の活力維持の最重要課題。鶴岡工業の生徒が研究したテーマは1人口減少を止める対策2増える空き家対策3子育て世代に人気の街にするために―など。この中で生徒は、北海道上士幌町はふるさと納税の財源で保育園を無償化するなどで人口増加につなげたことを紹介している。
上士幌町は1955年に約1万3600人だった人口が、2014年に約5000人を切った。活路を見いだしたのはふるさと納税。その税収で「子育て・少子化対策夢基金」を設け、保育料無償化や高校生までの医療費無料化策などを進めた。人口は15年から社会増が続いているという。町は町民が上京して寄付者と「感謝祭」を開き、「グラウンドの住民は5000人だが、スタンドには10万人の応援団がいる」と、「関係人口」維持の重要性を掲げている。一過性の寄付でなく、町に関心を持ってくれる人を大切に思っている成果である。
地方で暮らしてみたいという人は多い。しかし首都圏で生活の“根拠”を築いている人にとって、地方で「何で食べていけるか」という根拠に乏しければ、田舎暮らしは「希望」の域から抜け出せない。上士幌町は町内全域に光回線によるネット環境を整え、シェアオフィスも開設して受け入れ態勢を整えたという。
庄内総合支庁は、庄内地域のさまざまな分野で活動している若者に参画してもらい「庄内若者協働考房」を設立している。単身者、子育て世代などの若い世代の移住促進に、庄内には何が必要か若者の視点での意見を取り入れる狙いだ。人口流入につながる対策を見いだしてもらいたい。
NPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京)によれば、地方は「首都圏より住居費が安い、自然の中で生活できる魅力がある」などで、20?50代の間で「転職せずに移住できる」ことへの関心も高いという。通信環境が進歩し、テレワークで働き方が変化していることへの期待感もある。庄内の自治体もそのような取り組みはしている。この先のさらなる進展に期待したい。
2023年(令和5年) 3月1日(水)付紙面より
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酒田市の酒田南高校(齋藤法明校長)グローバル専攻の生徒たちの卒論発表会が25日、同校南千日町キャンパス講堂で行われ、生徒たちがこれまでに取り組んだ学習の成果を披露した。
同校グローバル専攻は「新しい学びのカタチの追求」を目標に2019年に開設。生徒たちは昨春から専攻独自の教科横断型の探究活動「全員セッション」などを通して「歴史」に対して理解を深めてきた。
今回は「学びの自分史」として、3年生10人のうち代表7人が▽プレゼントのリレー▽グローバル専攻で学んだプレゼンの軌跡から▽歴史から学ぶ考えることの大切さ▽歴史から学ぶ「失敗」の見方▽私たちは歴史とどのように付き合っていくべきか▽私は諦めない▽一足先に社会に出る私が得た学び―と題してそれぞれステージ発表した。
このうち、「グローバル専攻で学んだプレゼンの軌跡から」と題して発表した伊藤聖幸さん(18)はドイツの政治家・ビスマルクの「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」を引用し、「自分は大勢の経験を『歴史』と考えた。自分の経験だけで考えても幅は広がらないが、大勢の知識、経験を学べば広い視点や新たな選択肢を持つことができる。自分も大勢の人からアドバイスをもらい自身の変化の材料としてきた」などと意見発表した。
会場には保護者らも参観に訪れ、堂々と発表する生徒たちに大きな拍手を送っていた。