2023年(令和5年) 4月7日(金)付紙面より
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新型コロナウイルス感染拡大の影響で2019年9月を最後に途絶えていた外航クルーズ船の酒田港寄港が6日、約3年半ぶりに再開。第1船となった「シルバー・ミューズ」(バハマ船籍、4万700トン、乗客定員596人、クルー411人)が同日朝、酒田市の酒田北港古湊埠頭(ふとう)に姿を見せ、岸壁や街中では市民を挙げて乗客をもてなした。
2017年8月に「コスタ・ネオロマンチカ」(イタリア船籍)が初めて寄港して以来、同港には外航クルーズ船が数多く訪れていたが、コロナ禍の影響で途絶えていた。新型コロナ対策の緩和に伴い今回、受け入れが再開。市によると、今月はシルバー・ミューズが今回を含めて2回、ダイヤモンド・プリンセス(英国船籍)と初寄港のル・ソレアル(仏国船籍)各1回の計4回寄港する予定。
シルバーシー・クルーズ社が運航するシルバー・ミューズは客船クラスが「ラグジュアリー」で、これまで同港に寄港した外航クルーズ船の中で最も上位の位置付け。企画クルーズ「春の日本ぐるり周遊と釜山15日間」で先月29日に大阪を出発、鹿児島、長崎、釜山(韓国)、金沢、新潟、酒田、青森、函館、東京、神戸を巡るコースの9日目で入港した。
シルバー・ミューズは午前8時前に同市宮海の酒田北港古湊埠頭に入港。埠頭には酒や菓子、伝統工芸などの出張店舗、キッチンカーがずらりと並び、降り立った乗客・乗員が買い求めていた。オプショナルツアーとは別に、同市は今回、埠頭と日和山公園を結ぶシャトルバス、日和山公園―土門拳記念館―山居倉庫を巡る周遊バンを独自に運行して乗客を街中に誘導。乗客たちは日和山公園で満開の桜(ソメイヨシノ)を愛でたほか、山王くらぶで伝統のつるし飾り「傘福」、舞娘(まいこ)茶屋相馬樓では酒田舞娘の演舞に「美しい」と感嘆の声を上げていた。
同船は同日午後6時、次の停泊地に向けて出港。丸山至市長は5日午後の会見で寄港再開に触れ、「寄港は街のにぎわいづくりに貢献する。酒田の魅力を紹介する絶好の機会」と話した。
2023年(令和5年) 4月7日(金)付紙面より
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山形県で植物の調査を進めているフロラ山形(土門尚三会長)は、県内で初めて鶴岡市下川の山林に落葉低木「ヤブサンザシ」が自生しているのを確認した。高さ約1メートルの株が20株以上見つかった。会員は「これほど群生しているとは思わなかった。なぜ、これまで見つけられなかったのか不思議なくらい。とても貴重」と話している。
ヤブサンザシはスグリ科の植物。雄株と雌株があり春に黄色い花を咲かせ、10月下旬から11月上旬の晩秋に赤く小さな実をつける。北本州産高等植物チェックリスト(東北植物研究会、1991年発刊)によると、自生が確かめられているのは宮城、岩手、青森、新潟。山形を含む秋田と福島の3県は未確認だった。
フィールド調査は今月2日に行われた。フロラ山形の沢和浩事務局長(山形市)や会員、植物に詳しい鶴岡市の有識者ら合わせて6人が参加。下川の山林に群生し、花を咲かせているのを写真撮影した。証拠として一部をサンプリングし標本にした。
今回の発見場所は以前、フロラ山形の会員や有識者がフィールド調査した際、県内では見慣れない植物があることが分かっていた。何の種類か特定できる開花時期を見計らって調査を試みた。
フロラ山形の会員は「コナラやケンポナシがある山林の中にあった。最初はほんの一部だろうと思っていたが、これほど広範囲に自生しているとは予想外。やはり花が咲く時期に目視で確かめないと分かりづらい。初確認したヤブサンザシは『新山形野生植物目録』に記録する」と説明した。
2023年(令和5年) 4月7日(金)付紙面より
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鶴岡市湯田川のJA鶴岡湯田川催芽場で、温泉の廃湯に種もみを浸して発芽を促す伝統の「芽出し作業」が繁忙期を迎えた。
温泉を活用した芽出し作業は1848(嘉永元)年、地元農家が温泉を農業にも生かそうと始めたのが起源とされる。
種もみを入れた袋を32度の湯に満たされた水槽に12時間浸し、近くに敷いた木材の上に並べてむしろで覆い、さらに12時間ほど蒸す。専用機器や自宅の浴槽を使う芽出し作業に比べて農家の負担が少なく、均等に発芽するという。今年は庄内一円や新潟県など県外の農家約1000件から「はえぬき」「つや姫」「雪若丸」を中心に計241トンが運び込まれる。
作業は今月1日から始まり、連日作業員が午前5時に作業を開始。早朝と午前、午後と作業を3回に分け、一日平均約26トンを湯に浸している。作業は6日に繁忙期を迎え、約15人が分担し袋を水路に並べたり、むしろで覆ったりと作業に追われていた。
JA鶴岡の担当者は「今年は例年より気温が早く上がり、水温も高くなっているため芽が出る時間も短くなっている。湯から袋を上げる時間や蒸す時間に注意を払いながら調整している」と話していた。湯田川温泉での芽出し作業は今月26日まで行われる。
2023年(令和5年) 4月7日(金)付紙面より
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小児がん患者の支援を目的とした社会貢献活動「レモネードスタンド」が今月10日から庄内町の和心で始まる。同施設で働きながらヨガインストラクターや食育アドバイザーとして活動する堀井さおりさん(30)=同町南野=が運営するもので、レモネードのペットボトルを販売し、収益の一部を小児がん支援組織に寄付する仕組み。常設でのレモネードスタンド活動は庄内地域では初という。堀井さんは「活動を通して多くの人から小児がんについて知ってもらえれば」と話している。
堀井さん10日から活動庄内町「和心」に常設
レモネードスタンドは米国で始まった社会貢献活動。小児がん患者の少女が、自分と同じ病気の子どもたちのために治療費や研究費を寄付しようと自宅の庭にレモネードスタンドを開いたのが始まり。米国でレモネードは元気を与えてくれる飲み物として愛飲されている。少女が亡くなった後もその遺志は引き継がれ、全米で活動が続けられている。
国立がん研究センターなどによると、日本国内では年間約2300人の子どもが白血病や脳腫瘍などの小児がんと診断されている。
レモネードスタンドは日本でも全国的に行われているが、県内ではあまり浸透していないという。そこで県青年の家がコーディネートするボランティアサークル「nicoこえ」(天童市)が今年3月に「山形レモネードスタンドプロジェクト」を開始。同サークルでも天童市や山形市でレモネードスタンドを実施するとともに、活動に興味のある人をサポートするなどしている。
堀井さんは千葉県柏市出身で、3年前に一家で同町に移住した。ヨガインストラクターなどの活動の中で、知人や母親らから子どもの病気や健康などについて相談される機会が多かったという。このプロジェクトをSNSで知り、理念に共感。「自分も何かできることはないか」と勤務先である和心に相談し快諾を得た。
同施設内のお食事処『爽味旬風 和心』のレジ脇にペットボトルスタンドを設置。500ミリリットル1本200円で販売し、収益の一部を小児がん支援組織に寄付する。今月10日から販売を始め、時間は午前11時―午後2時。
堀井さんは「多くの人から子どもの病気などについての話を聞く機会があり、何か私もできることをしたいとずっと思っていた。小児がんについて多くの人から知ってもらいたい。私の活動を見てもらうことで、こうした活動をする人が増えてくれれば」と話していた。
2023年(令和5年) 4月7日(金)付紙面より
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県立産業技術短期大学校庄内校(佐藤俊一校長)の本年度入学式が5日、酒田市京田三丁目の同校体育館で行われ、3科計32人の新入生が地元産業界で即戦力となる知識・技術の習得に向け、その第一歩を踏み出した。
庄内校は1997年4月、地元産業界の要請を受けて開校。2年制課程の職業能力開発短期大学校で、地域に根差した即戦力の人材養成を主眼に実践的なカリキュラムを少人数教育できめ細かく学んでいる。就職率は地元を中心に毎年ほぼ100%。本年度は生産エンジニアリング科5人、情報通信システム科13人、IT会計ビジネス科14人の計32人が入学。式には新入生と共に保護者、教職員らが出席した。
佐藤校長は式辞で、アイルランドの文学者、バーナード・ショーの「人生とは自分を見つけることではない。自分を創(つく)ることである」という言葉を紹介し、「友と語り合い、学び合い、切磋琢磨(せっさたくま)し人格を磨いてほしい。自分を創り、優れた人材に成長することを期待する」と激励した。
村山朋也県庄内総合支庁長が吉村美栄子県知事のあいさつを代読。弦巻伸・同校教育振興会長の祝辞に続き、新入生代表の佐藤緑さん(18)=IT会計ビジネス科、酒田市、酒田光陵高出=が「この2年間で将来に生かせるような知識・スキルを身に付けたい。多くのことに挑戦し、さまざまな活動に積極的に取り組むことを誓う」と決意を述べた。