2023年(令和5年) 7月16日(日)付紙面より
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鶴岡市の出羽三山神社の例大祭「花祭り」が15日、羽黒山山頂で行われた。4年ぶりに色鮮やかな「花梵天」が境内をくねるとともに、大勢の参拝者が厄除けの神花を受け取った。
花祭りは稲の開花時期に合わせ五穀豊穣(ほうじょう)を願う祭り。この日、同神社三神合祭殿では、阿部良一・新宮司が祝詞を奉納し、前宮司の宮野直生・県神社庁長が献幣使(けんぺいし)を務め、祭詞を奉納。神職や巫女(みこ)が厳かな舞を奉納上演した。
神社境内では、大勢の参拝者が見守る中、神輿(みこし)3基と高さ約5メートルの花梵天3基が鏡池の周囲を巡行。神輿は羽黒高サッカー部員など高校生らが担ぎ手を務め、若い力が伝統の祭りを盛り上げた。
花梵天の「花取り」も復活し、巡行中に見物客の頭上に梵天が傾けられると、大勢が手を伸ばし、ご利益があるとされる色とりどりの花を取り合い、沸いていた。参拝者は勇壮で華やかな祭事を楽しみ、家々に飾る厄除けの神花を持ち帰った。
第25代宮司に阿部権宮司 出羽三山神社 宮野氏は名誉宮司就任
出羽三山神社(鶴岡市羽黒町手向)の宮野直生宮司(75)=鶴岡市馬町=が14日に退任し、15日付で後任の第25代宮司に阿部良一権宮司(66)=鶴岡市羽黒町手向=が就任した。神社本庁人事委員会で承認された。宮野氏は名誉宮司に就き、引き続き山形県神社庁長の職務に当たる。
阿部氏は國學院大文学部神道学科卒。1979(昭和54)年に奈良県の春日大社に奉職し、禰宜(ねぎ)を務めた。99年に郷里に戻り出羽三山神社に奉職。2014年から権宮司。父の阿部良春氏は同神社の第22代宮司を務めており、親子2代の宮司職となる。
宮野氏は鶴岡市馬町の椙尾神社社家の生まれ。2014年に宮司に就任。14年の羽黒山午(うま)歳(どし)御縁年の際には、東日本大震災の被災地の多くの信者らに生きる力を与えたいと、出羽三山の開祖・蜂子皇子像を初公開した。羽黒山頂の鏡池周囲への玉垣整備、羽黒山大鳥居建て替え、山頂の参集殿脇への「羽黒山千佛堂」整備、隋神門周辺の庭園整備などを進め、出羽三山の繁栄、地域振興に尽力した。
2023年(令和5年) 7月16日(日)付紙面より
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鶴岡市馬町の市自然学習交流館ほとりあは、ラムサール条約登録湿地・大山下池の泥の中に含まれる埋土種子を活用し、ジュンサイの発芽に約60年ぶりに成功した。
ジュンサイはスイレン科の浮葉植物。独特のぬめりを持つ若葉や茎は日本料理の食材として利用されている。下池では江戸時代から1953年ごろまで地元組合が収穫しており、その風景は大山の初夏を象徴するものだったという。池の活用法の変化に伴う水質悪化が一因となり、55年ごろに下池のジュンサイは絶滅したものとされてきた。
ほとりあでは埋土種子から水生植物の再生を図ろうと2021年6月、経団連自然保護基金の助成を受け、下池の泥を重機で採取し、大型水槽などにまいた。以降観測を続けてきたところ、翌年7月には種子が発芽し、水槽内に3株が出現。今年の6月には開花し、種子ができたという。
ほとりあ学芸員の上山剛司さん(41)は「発芽に適した日射、水深、水温など幸運も重なり、水質環境を整えることができた。子どもたちがジュンサイの触感を体験したり、60年前と現在の池の環境のちがいを学習するための教材として活用していければ」と話した。
【埋土種子】落ち葉の下や土の中に留まり何年も生き続け、伐採などのきっかけで発芽する種子。発芽に適さない環境では発芽せずに機会を待ち、休眠状態になるという。
2023年(令和5年) 7月16日(日)付紙面より
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文化庁は14日、認定から6年経過した「日本遺産」17件を対象に、地域活性化や観光振興に向けたこれまでの取り組み内容や今後の計画を評価し、酒田市や鶴岡市など全国49市町村で構成する「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間?北前船寄港地・船主集落?」と、鶴岡市の「サムライゆかりのシルク 日本近代化の原風景に出会うまち鶴岡へ」など15件を「認定継続」としたと発表した。
同庁の日本遺産審査・評価委員会が審査した。評価対象17件はすべて2017年度に認定されたもの。
認定継続となった北前船寄港地・船主集落は、日本遺産を活用した集客・活性化、コミュニティーの再生・活性化、持続可能な体制の維持・確立の各項目とも評価が「可」となり、全体としておおむね目標を達成しているとした。今後の地域活性化計画に対する総括評価では、「北前船によって発展したものと、地域の名産品を結び付けることで、『ここにしかない魅力』を伝えるというビジョンとともに、実現に向けた具体的な施策が描けており、評価できる」とした。
また、サムライゆかりのシルクについては、集客・活性化のうち「観光客入り込み数」が、コロナ禍の影響を受ける以前を含め目標を達成していないとして「不可」となったが、全体としてはおおむね目標を達成していると評価した。今後の地域活性化計画については、「コロナ後を見据えたインバウンド向けの視点について検討・具体化が望ましい」などとした上で、「鶴岡市の他の日本遺産との連携も含め、地域内の相乗効果が発揮されることが期待できる計画」と評価した。
今回の評価対象17件のうち、残る2件は「再審査」となり、今後の再審査の結果次第で、認定が取り消される可能性もある。
2023年(令和5年) 7月16日(日)付紙面より
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鶴岡市昭和町の八坂神社(齋藤元宮司)で15日、同神社の例祭「胡瓜(きゅうり)まつり」が行われた。参拝者がキュウリ2本を奉納し、祈祷したキュウリ1本を「御護符(おごふ)」として持ち帰る独特の祭り。この日の午前中はあいにくの雨天となったが、近所の住民がキュウリを奉納する姿が見られた。
同神社の祭神「牛頭大王」は疫病退散の神様で、地元では「天王さま」と親しまれており、持ち帰ったキュウリを食べると厄除けになるといわれている。
この日の午前中、雨の境内にぽつりぽつりと参拝者が姿を見せ、キュウリ2本を本殿に設置された台に奉納。家内安全や身体堅固を願いながら静かに手を合わせていた。
同神社では午後3時から祭典御祈祷が行われ、夕方には樽みこしが神社を出発。夜には境内で芸能発表会の「唄とおどりの桜ショー」が企画された。
2023年(令和5年) 7月16日(日)付紙面より
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西川町の伝統工芸「月山和紙」にスポットを当てた企画展「月山和紙三人展―伝統の技とあかり」が、酒田市松山文化伝承館で開かれ、色鮮やかな和紙の数々が訪れた人の目を引いている。
月山和紙は、西川町で江戸時代から冬の農閑期のなりわいとして続いてきた手すき和紙。1950年代に「西山和紙」から「月山和紙」と名称を変え、現在は同町在住の三浦一之さん、シブヤナオコさんの2人がその技を受け継いでいる。薬品漂白せず、国産コウゾ100%の手すきで一枚ずつ丁寧に作られているのが特徴。今回は2人の作品と、同町で活動している月山和紙あかり作家のせいのまゆみさんの作品計約100点を集め、月山和紙の魅力を展示した。
三浦さんは和紙の中に米沢市のベニバナ、西川町の山ブドウのつる、紅葉、鶴岡市のシナノキの皮などをすき込んだ自然豊かな作品がメイン。シブヤさんは月山和紙の小物入れや名刺入れのほか、コースターやランチョンマットなど、水に強く生活に取り入れられる工夫を凝らした作品が並ぶ。
月山和紙を活用し間接照明や小物作品の制作活動を展開しているせいのさんは、月山の自然をモチーフに、カエデやドウタンといった植物を入れたり、和紙に細かく穴を入れて陰影を映し出すなど、和紙から透ける光が周囲を優しく照らす。制作工程を紹介するパネルも展示され、丁寧に作っている様子が見て取れる。
企画展に伴い、東北芸術工科大の学生らによる月山和紙を使った作品や、山形の風景画など約50点も展示。展示は23日(日)まで。