2023年(令和5年) 7月5日(水)付紙面より
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「Chat(チャット)GPT」など質問を入力するだけで回答が自動で返ってくる対話型の生成AI(人工知能)に関し、酒田市は3日、策定したガイドラインに基づき7月から業務に導入したと発表した。生成AIは全国的に普及が進むが、本格的な導入は県内自治体では初めて。丸山至市長は「活用の幅が広がっており、業務の効率化、市民サービスの向上に役立つ可能性が認められた」と話している。
導入した生成AIサービスは、いずれも米国のオープンAIが開発し公表した「チャットGPT」、グーグルによる「Bard」の2種。日本語にも対応しており、対話するようにやりとりを進めることで文章を作成・要約することなどができ、全国的に個人や企業、自治体などでの利用が急拡大している。
市は今春以降、先行自治体の事例などを参考に、情報企画課デジタル変革戦略室が中心となって業務への導入を検討。市総合計画後期計画に関するアンケート結果の分析などで試験的に運用し、作業の効率化をはじめとしたその効果を検証してきたほか、活用する上でのガイドラインを先月末までに策定した。
ガイドラインでは、生成物は業務担当者が素案を作成する際の参考資料の一つにとどめることとし、業務範囲として▽あいさつ文や一般文書などの文章生成▽誤字脱字や文章の流れ確認といった校正▽会議録などの文章要約▽事業提案やアドバイスなどアイデア生成▽情報検索▽プログラムコードの生成▽翻訳―などとしている。
各課に貸与しているタブレット端末を用い、活用する際には業務内容を明確にした上で所属長の許可を得る。個人情報、業務上の機密事項に当たるものの入力は禁止とした。生成物の活用に当たっては差別用語や倫理に反する表現が含まれていないか、著作権を侵害していないか確認。効果的な活用に資するため職員の「質問(プロンプト)」は活用事例報告書として提出、共有するという。
本間義紀・市デジタル変革調整監によると、ガイドライン周知後から職員による問い合わせが相次いでいるという。
3日の定例会見で丸山市長は、「生成物は『たたき台のたたき台』という認識。公式な文書にそのまま反映されるものではない。しっかりルールを定め、セキュリティーに万全を期した上で活用したい」と話した。
2023年(令和5年) 7月5日(水)付紙面より
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「酒田の開祖」とされる徳尼公とその家臣「三十六人衆」の縁(えにし)をきっかけとし、酒田市は6月29日、岩手県平泉町と文化交流協定を締結した。市民・町民の相互訪問、歴史的なつながりを理解するための取り組みなど通して交流を深めていく。
徳尼公は平安末期の奥州平泉の藤原氏第3代・秀衡の妹「徳の前」とも、後室「泉の方」ともされる。1189年に第4代・泰衡の死によって藤原氏が滅亡した際、遺臣36騎を連れて平泉を逃れ、酒田に落ち延びた。飯森山に「泉流庵」を結んで徳尼公となり、1217年4月15日に87歳で亡くなるまで藤原一門の菩提を弔った。「泉流」は「平泉から流れてきた」の意とされる。
遺臣36人は地侍となって廻船業などを営み、後に商人が町を治める「酒田三十六人衆」の礎となったとされる。泉流庵を前身とする泉流寺(同市中央西町)が所蔵する徳尼公の木製座像は1751年に火災で焼失、64年に本間家第3代・光丘翁が京都で作らせ、それを納める御廟とともに寄進した。毎年4月15の命日に開帳し法要を行っている。
同町で開催される春の藤原まつりに三十六人衆の子孫で組織する「酒田三十六人衆」のメンバーが出演したり、徳尼公法要や酒田まつりに同町関係者が訪れるなどこれまでも相互に交流してきた。文化面を中心とした交流を推進することで、交流人口の増加を図るとともに、文化振興と地域経済の発展に寄与することを目的に今回、「奥州藤原氏が紡いだ酒田市・平泉町の絆を未来につなぐ文化交流協定」を締結した。
同町の平泉文化遺産センターで行われた締結式には、丸山至市長、高橋千代夫市議会議長らが出席。丸山市長、同町の青木幸保町長が「共有する歴史を礎として互いの歴史を学び、地域への愛着と誇りを持って、交流を深め、未来に向けて魅力あるまちづくりを推進」などとつづられた同市出身の書道家・高田桂帆さん(広島県在住)が揮ごうした協定書に署名した。
3日に市庁舎内で行われた定例会見で、丸山市長は「平泉の平は平和への祈りの意味。交流を通してこの地にも平和の精神を根付かせたい。これからの交流拡大に期待している」と話した。
市文化政策課によると、歴史講演会や資料パネル展の相互開催などで互いに理解を深めていくという。
2023年(令和5年) 7月5日(水)付紙面より
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人が減っている現実と、その事が経済活動に与える影響も大きいことを突き付けられているようである。来年春卒業する高校生の就職活動が今月から始まった。山形労働局によれば県内の高校を卒業する就職希望者は1815人。2002年度の統計開始以来初めて2000人を割った。地元企業にとって厳しい採用状況になりそうだが、新卒者にはより多く地元に残ってもらいたい。
アフターコロナで経済活動も元に戻りつつあり、企業の求人意欲も高まっている見通しだ。高卒就職希望者の地元志向も高まっているが、求職者の絶対数が少なければ、企業にとって人手不足感は否めない。少子化が、就職環境にさまざまな影響として表れている。
◇ ◇
山形労働局の5月15日時点でのまとめでは、来春の県内の高校卒業予定者は8713人(前年比591人減)、うち就職希望者は1815人(同269人減)。就職希望者の80・7%、1465人(同228人減)が県内企業を希望している。人数は減っているというものの、地元志向の高まりは好ましい傾向であろう。希望職種(全県)は▽生産工程の職業▽専門的・技術的職業▽サービスの職業▽事務的職業▽販売の職業―などが上位を占めている。
それにしてもの生徒数の減りようである。卒業者数とは別の数字だが、第2次ベビーブーム世代の受験期の1987年、全県の公立全日制と定時制合わせた募集定員は1万3420人、今より1・5倍も多かった。その一方、当時はまだ「地方は大都市圏への労働力供給地」などと言われ、県外就職者も多かった。
毎月、県の人口動態が発表される。6月1日時点で県全体で前月比955人が減った。このうち庄内5市町は合わせて318人(前月比39人減)も減り、県全体の33%を占める。進学率の上昇で、来春の卒業予定者の73・1%が進学を希望しているが、県内進学率は3割弱とみられている。例年、4?5月に進学による転出も、人口減少に影響しているのではないだろうか。
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厚生労働省によれば今年3月末の首都圏の求人倍率は88年以降で最高になった。少子化と進学率の高まりが求人倍率に影響している。大都市圏の企業の賃金は良いだろうが、賃金に負けない暮らし良さが地方にはあるはずだ。鶴岡市の高校生が「鶴岡を住みたい街ナンバーワンにする」学習に取り組んだこともある。
将来が懸かっている就職や進学は人生の一大転換期。今まで学んだ知識や技術を生かせる進路を選ぶため慎重にならねばならない。地元にも自分を生かせる企業は多い。1社だけを見て決めるのでなく、さまざまな仕事への理解を深め、進路指導の教諭と相談しながら決めてもらいたい。将来、地元を支える力になるために。
2023年(令和5年) 7月5日(水)付紙面より
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音楽に合わせて鈴やタンバリンが鳴り、感動的なシーンでは紙吹雪が舞う―。鶴岡市の鶴岡まちなかキネマ(まちキネ)で30日、世界的に大ヒットしたインド映画「RRR」の上映に合わせた「マサラ上映会」を開催した。
マサラ上映とは、日本でインド映画を上映する際、騒いだり小道具で盛り上げたりしながら鑑賞する形態のこと。まちキネでは、今年4月下旬からこの作品を上映しており、3時間という長時間の上映にもかかわらず、劇中に織り込まれる「ナートゥダンス」と呼ばれる“高速ダンス”が話題を呼び、作品の面白さからリピーターも多く、これまでで一番の観客動員数を記録した。マサラ上映会を行うのは、今回が初。熱狂的な「RRR」ファンの声を聞き入れ、他館で行っている上映会を参考にしながら、クラッカーや紙吹雪を準備し、入場者に配布した。
当日は約70人が参加。応援うちわを自作した女性や、シャツにサスペンダーといった主人公のコスプレをした男性もいた。午後7時に、上映前にスタッフから注意事項の説明などがあった後、本編がスタート。作品は1920年代のイギリス植民地下のインドを舞台に、英国軍に立ち向かう2人の青年の友情と選択、戦いを描いたもので、音楽や効果音に合わせて、自身で用意した鈴やタンバリンを鳴らしたり、捕らえられた仲間を救出する場面では赤や黄、青など色とりどりの紙吹雪をまいて、気分の盛り上がりを表現していた。さらに、砲撃に合わせてクラッカーを打ち上げるなど、思い思いに映画を楽しんでいた。
最後に記念撮影をし、スタッフから8月6日(日)にもマサラ上映会の“おかわり”をすることが告げられると、わっと歓声が上がった。最後は全員で紙吹雪などを片付け、会場を後にした。
職場の同僚同士で参加した30代女性の2人は、ラストのダンスシーンではステージに上がって会場を盛り上げた。そして「映画を見るのは3回目。マサラ上映をしてくれて大正解! 一番楽しめた」「次回の上映までダンスに磨きをかけて、また踊りたい」と話していた。
2023年(令和5年) 7月5日(水)付紙面より
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鶴岡市立加茂水族館の魚匠ダイニング沖海月(須田剛史料理長)は鼠ケ関などで取れた夏ハモや鶴岡市の在来野菜の外内島胡瓜(きゅうり)を堪能できる「鶴岡天神鱧(はも)御膳」の提供を始めた。
夏ハモの定食を夏の風物詩として定着させ、新たな伝統にしようと、3年前から毎年この時期に須田料理長がメニューを考案し、期間限定で提供している。
御膳には梅、竹、松、楓の4つがあり、基本の梅の内容は▽湯通ししたハモに梅肉を添えたハモの落としとマダイ、マスの刺し身▽ハモの魚卵が入った茶わん蒸し▽だだちゃ豆豆腐とミニトマトのシロップ漬け―の3品にご飯とみそ汁、漬物が付く。竹はそれに加えてハモと外内島胡瓜の天ぷらとハモのお造り、ご飯ではなくそばとむきそばが提供される。松と楓には▽外内島胡瓜とマダイの和え物▽ヒラメとカラスミと木の芽のちまき▽鶴岡天満宮の境内で採れた青梅の甘露煮▽もずく酢―の前菜4種とハモと外内島胡瓜のお吸い物が楽しめる。さらに楓はハモのしゃぶしゃぶなどが付くといったハモ尽くしのコースとなっている。
須田料理長は「コロナが落ち着いてきたこともあり、より多くの観光客が見られるようになった。これからも鶴岡の食文化を知ってもらえるようなメニュー開発に取り組んでいきたい」と話した。
値段は梅、竹、松、楓それぞれ1600円、2600円、3500円、6000―8000円(すべて税込み)。松と楓は前日までの予約が必要。夏ハモ御膳は9月末まで提供される予定。