2024年(令和6年) 2月9日(金)付紙面より
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3月1日から酒田市内の各展示施設で行われる「酒田雛街道」を前に、庄内傘福研究会(工藤幸治会長、会員15人)では「傘福」と、傘福に吊(つ)り下げる細工物に「庄内刺し子」を刺しゅうした“日本三大”を組み合わせた展示物の制作が追い込み作業に入っている。
傘福は古くから酒田に伝わる吊るし飾りの一つ。子宝や子どもの成長、病気治癒などを願った「祈願系」と祭りの際に飾られた「祭礼系」の2系統がある。「雛の吊るし飾り」(静岡県)、「さげもん」(福岡県)と並び日本三大吊るし飾りに数えられている。
一方、刺し子は衣類の補強などのため、豊作などの願いを込めた文様を縫い込んだもの。「庄内刺し子」は、目が細かく繊細緻密なデザインが特徴とされ、「こぎん刺し」「菱刺し」(青森県)と共に日本三大刺し子と呼ばれる。
同会では庄内各地の寺社に奉納された傘福などを調査する中で、同市松山地域で発見された傘福に、庄内刺し子が入った細工が残っているのを発見。傘福も庄内刺し子も込められた願いは同じだとして今回の作品制作を計画した。
昨年6月ごろからメンバー7人が着物の生地などを使い傘福に吊り下げる細工物の制作を開始。細工物は縦横8センチほどの大きさで健康を祈願した柿の実に「柿の花刺し」、子宝に恵まれるよう願ったウサギに「草刺し」など庄内刺し子の文様を一針一針手縫いし140個制作した。7個ずつ10本吊るし、完成すると長さ約1メートル20センチ、幅約70センチの傘福一対になるという。
4日には市交流観光拠点施設「日和山小幡楼」にメンバーが集まり、細工物の出来栄えなどを確認していた。同会では「酒田には日本三大のものが2つもある。合わせて見てもらい、込めた願いやルーツを正しく知ってもらえれば」と話していた。同会の展示は来月1―31日まで日和山小幡楼で行われる。