2024年(令和6年) 2月10日(土)付紙面より
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出羽商工会(上野隆一会長)は1月30日―2月2日の日程でベトナムの首都ハノイ市を訪れ、労働者派遣などに取り組む企業の視察・交流を行った。現地の派遣状況の動向を調査するとともに、庄内地域でも深刻な課題となっている生産年齢人口減少への対応策として外国人技能実習生の受入拡大を図るもの。同商工会は「本当に労働力を必要としているのは小規模事業所。事業規模の小さい企業が実習生を受け入れられるよう仕組みづくりを進めていく」と話している。
小規模事業所にも実習生受け入れ見据える
視察団は出羽商工会会員企業関係者と事務局合わせて15人。1月30日に出発し、31日にハノイ市の「クインハノイ投資貿易及びサービス有限会社」を視察した。同社はベトナムから諸外国への労働者派遣を中心に事業を展開しており、日本語や技能取得の研修も実施している。東京や大阪など日本国内に3事業所を持つ。
出羽商工会によると、ベトナム側の日本企業へ対する希望を聞くなど視察交流を進める中で、近年は派遣先として日本よりも欧州や台湾、韓国を選ぶなど、青年層の希望が変化しているという。一方で派遣会社側は日本に対して好意的で親近感を持っており、今回も視察団は手厚い歓迎を受けた。上野会長も「非常に良い交流ができ、実りのある視察だった」と述べている。
出羽商工会は2019年にベトナムからの実習生の受け入れを開始。コロナ禍の影響で2年ほど受け入れを中断し、22年に再開した。過去6年で約40人の実習生を受け入れている。1月下旬に4回目の受け入れが行われ、18~32歳の男女7人が来日。約1カ月の日本語研修を受けた後、会員企業3社に配属される。
上野会長は「これまでは比較的規模の大きい企業を対象に実習生の受け入れを募ってきた。しかし本当に労働力を必要としているのは小規模事業所。今後はそうした企業が実習生を受け入れられる仕組みづくりに取り組みたい」と話すとともに、「小規模事業所1社の受け入れ人数が1、2人でも10事業所が希望すれば10~20人になる。受け入れ人数を100人規模に到達させたい」の今後の展開を話した。
一方、実習生受け入れに関わる最大の課題は「言葉の壁」。今のところ受け入れ先の各企業はスマートフォンの翻訳アプリなどを活用しているが、上野会長は「会話が最高のコミュニケーションであり、実習生が日本語をしっかり学ぶことが必要。内陸では今春、学校法人が本県初の日本語学校を開設する。言葉の壁の解決には教育機関の協力や行政の支援が不可欠」と指摘する。さらに「今後、地方の人口減少はさらに加速すると分かっているのに、対応策を何もとらなくて良いはずがない。生産人口の増加が庄内の地域活性化につながる。小規模事業所が持つ『外国人実習生を呼べない』という先入観を壊すため出羽商工会を頼ってもらいたい」と話している。