2024年(令和6年) 2月11日(日)付紙面より
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16道府県49市町が認定を受ける日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落」のうち、酒田市のストーリー構成文化財の一つになっている「雛(ひな)めぐり」を楽しむ「酒田雛街道」が3月1日(金)に開幕するのを前に、同市字新屋敷の松山文化伝承館(榎本和介館長)で9日、企画展「雅(みやび)やかなるおひなさま―木目込・御殿鞠(まり)・源氏物語とともに」がスタート、ひと足早く春の訪れを告げている。
江戸期から明治期にかけて北前船の往来で栄えた酒田には、江戸や京都、大阪から運ばれてきた由緒あるひな人形が数多く残り、これらを紹介する酒田雛街道は1996年から毎年この時期に開催している恒例イベント。同館での展示を皮切りに、山王くらぶでの「傘福展」終了の11月上旬まで、早春を中心に市内を華やかに彩る。
松山地域に伝わるひな人形は一度に全道具を購入するのではなく、長い年月をかけて買い足されているのが特徴。段によって購入年が異なるため、着物の模様や人形のサイズも違うなど、その家独自のひな段飾りになっているという。今回は旧家に代々受け継がれてきた江戸―昭和のひな人形が並び、時代の移り変わりを感じさせる。
初展示となった松山藩最後の家老・松森胤保(たねやす)(1825―92年)のひな人形は江戸期に作られた中でも小さく、顔や衣装がとても精巧に作られており、職人の細かい手仕事が見て取れる。また、江戸時代に奥女中たちが姫君のために手作りしたのが由来といわれる御殿鞠、今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公・紫式部が作者とされる「源氏物語」のうち、桃の節句の宮中行事「曲水の宴」などを再現した人形師・故佐藤芳涼さんによる和紙人形などもあり、みやびな世界が広がる。
榎本館長は「春の気配が漂う季節に温かな気持ちで鑑賞してもらえたら」と話した。展示は3月31日(日)まで(月曜休館)。