2024年(令和6年) 2月14日(水)付紙面より
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約360年の歴史を持つ酒田市の松山能(県指定無形民俗文化財)で使われる能装束の解説と着付けの実演会が10日、同市の松山城址館で開かれ、能楽ファンらが衣装をまとい役者気分を楽しんだ。
松山能は江戸前期の寛文年間(1661―73年)、江戸勤番の松山藩士が能楽を習ったのが始まりといわれ、明治以降は松山地域の住民による「松諷社」(榎本和介会長)が継承、1980年に県の無形民俗文化財に指定された。
実演会は、能舞台でしか見ることのできない装束について、多くの人から身近に感じてもらうとともに地域の伝統文化や能楽への理解を深めてもらおうと同市松山総合支所などが企画した。
この日は能楽ファンや松諷社のメンバーら約30人が参加。榎本会長が「役者は一人15分くらいで着付ける。松山藩士は観世流を学んだので、唐織は首元を開く形の衣装になっている。他の能とは違う形になっていて衣装を見るだけで能の流派が分かる」などと解説しながら、松山能で使われる山伏、武将、天女などの衣装を紹介。引き続き、参加者が着付けを手伝ってもらいながら能装束を身に着けた。「武将」の装束を着た渡邊恒博さん(75)=酒田市=は「能に興味があり、今回初めて参加した。あまり重さや動きづらさはないが、引き締まった感じがする」、榎本会長は「役柄によってある程度決まっていることはあるが、装束の色柄や小道具で高貴な身分などいろいろなことを表現している。装束を見るだけでも深い味わいがある」とそれぞれ話していた。