2024年(令和6年) 7月27日(土)付紙面より
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鶴岡市の致道博物館で「山口吉彦コレクション 探検!アマゾンワールド」が開催中だ。今回はただ見るだけでなく、観覧者が「探検の地図」を広げながら展示されている動物の剥製、昆虫の標本、先住民の生活用具などに関する質問に答える、アマゾンの文化への理解がより深まる展示内容に工夫した。夏休みに会場に出掛け、地球の裏側の国の文化に触れてもらいたい。
致道博物館は1975年から、これまで4回山口コレクション展を開き、今回が5回目。個人が収集した異国の民族文化財をテーマに、5回も企画展を開くことができるのは、それだけ多彩で貴重な異文化が、鶴岡にあるということにほかならない。
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山口吉彦さん(82)は、半世紀前から南米アマゾンの民族資料収集に打ち込んできた。動植物の標本、先住民が儀礼に使った仮面や羽根飾りの装束、狩猟道具など、今では現地でも手に入れることが難しくなった文化財も多い。生活用具なども含め、現地の人と一緒に生活して譲ってもらった資料は2万点にもなる。かつては鶴岡市出羽庄内国際村内に併設されていた「アマゾン民族館」に展示されていたが、2014年に閉館した。
鶴岡市は「国際化推進プラン」を策定している。出羽庄内国際村を拠点とした国際化の推進を図るとし、プランには国際化社会を担う人づくりのため「小中学校での国際理解教育」「国際理解講座や多文化共生講座」開催などが掲げられている。少子高齢化社会にあって外国人材の受け入れ、外国人住民の増加を見据えた施策の検討・推進などが盛り込まれている。
3月定例議会で国際化推進プランに関する一般質問があった。「本市のような規模の地方都市が、国際交流や多文化共生を目的とした施設を設置・運営していることは珍しい。先人たちの先見の明があればこそ」という質問内容だった。多くの人の知恵と努力で鶴岡市に異文化が培われたということになるようだ。
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アマゾン民族館は、入場者が減少するなど費用対効果という行財政改革で閉館したが、城下町にアマゾンがあることを十分活用しきれただろうか。貴重な資料は山口さんの長男が担う「一般社団法人アマゾン資料館」(鶴岡市)が管理している。致道博物館がこれまでも企画展を開いてきたのは、鶴岡市にとって貴重な資料であることを意味しているのではないだろうか。
雪国の鶴岡市に南米アマゾンの貴重な資料がある意外性を、知らない人が増えているかもしれない。企画展を見てアマゾンを探検した気分になり、自分なりの発見があれば自由研究のテーマになるかもしれない。致道博物館に足を運んで異文化に触れる。夏休みは格好の機会になる。企画展は8月18日まで。