2024年(令和6年) 11月2日(土)付紙面より
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3日は「文化の日」。そして9日までは「読書週間」。ところが文化庁の2023年度「国語に関する世論調査」で、月に1冊も本を読まない人が、初めて5割を超えて6割になったという。スマートフォンなどの普及が大きな要因のようだ。そして全国では書店が減少している。
出版文化の危機的な現状に、経済産業省は「多様な情報に触れることができる街の書店は、創造性が生まれる場」として、今春「書店振興プロジェクトチーム」を立ち上げた。漫画も含む書籍がもたらす経済効果が大きく、書店の活性化のため、どうしたら書店に足を運んでもらえるかというパブリックコメントも実施した。文化は地域の活性化につながるともいわれる。
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本を読まなくてもスマホなどから情報を得ることができる。通販で本を買うこともできるが、書店の棚を見ているうち、探していた本とは異なるいい本と偶然出合うことがある。書店があることの素晴らしさなのに、街から書店が減ってきているのは残念だ。文化の日だから本を読もうというのではない。普段から本を手にしてページをめくる習慣を身につけたい。
小紙に「致道館の日」にちなむ「児童・生徒論語作文」が載っている。鶴岡市立朝暘三小3年、目七夏南さんは「き本を大切に」のタイトルで、「漢字はき本の漢字を組み合わせて難しい漢字ができている。き本の漢字を考え、何回も練習して、だんだん書けるようになった」などと書いている。人は毎日何かを学び、体験し、その積み重ねで成長している。目七さんのように、基本を大事にしながら学ぶ。読書から学ぶことも同じことだと言えるのではないか。
幼い頃に本を読まなかったため、大きくなってからも文章を読むことが苦手になる傾向があるという。活字を追うのは面倒だが、その面倒さに負けまいとすることで集中力が養われるはずだ。ネットで得られる知識も大事だが“受け身の姿勢”ではなく、本にある場面を想像しながらさまざまな世界に触れる。いわば“攻めの姿勢”こそ大切さだと思われる。
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人が学習によって社会から習得した生活の仕方全般の総称が「文化」というから、人は毎日文化に囲まれて生活している。ただ、漠然と受け身の情報だけに頼っていたのでは、物事の真実を見極める力が育たない。情報があふれている時代だからこそ、思考力の基本となる読書に触れたい。
街の書店の閉店が続いている。電子書籍などに押されている影響もある。全国の書店数はこの20年余で半減したと伝えられている。大都市圏の、大学がある街でも書店が閉じているという。「立ち読み」の中から偶然の1冊を見つける機会も失われてしまう。時代の流れというだけでは片付けられない気がする。