2024年(令和6年) 12月21日(土)付紙面より
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自民党県連は、来年1月9日告示(同26日投開票)の知事選で独自候補の擁立を断念し、現職の吉村美栄子氏の支援を決めた。これによって吉村氏の無投票での5選の可能性が濃厚になった。これまでの自民党にはなかった異例の対応だ。吉村氏が無投票で当選することになれば、県民は同氏の長期県政を評価する機会も失われることになる。
自民党県連がこれまでの吉村氏との対立姿勢を一転させ、支援に転じたことについて県連会長の遠藤利明衆院議員(山形1区)は、「国政の政治とカネの問題が、少なからず地方へも逆風となっている。立候補したいという人がいなかった」などと語ったが、苦しい弁明ともとれる。
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吉村氏は2009年、現職を破って初当選。自民党は13年と17年に候補者擁立を断念、前回の21年は元県議を擁立して吉村氏に大敗した。今回の県連の会議では「独自候補擁立」「自主投票」との意見に加え、吉村氏支援に反対の意見もあった。しかし、「国政と県政、市町村が協力しないと、県の発展が思うように進まない」(遠藤県連会長)というような理由から、吉村氏支援が決まった。
自民党は衆院の県内3小選挙区で議席を持っている。それだけ保守層が強いとみられるが、一方、全県区の参院では2議席とも野党系に占められている。自民は来年夏の参院選を、21年の知事選で敗れた元県議を擁立して争うが、野党系の現職も出馬表明している。自民党県連は「参院選では知事には中立の立場でいてもらう」としているものの、知事選での“不戦敗”がどのように影響するだろうか。
自民党県連の独自候補見送りの背景には、吉村氏が10月の衆院選公示後、自民公認候補の事務所を訪ねるという、異例の行動を取ったことがある。吉村氏は豪雨災害対策、山形新幹線トンネル整備などへの協力に感謝するためなどとしているが、知事選に向けた自民党へのけん制だったとの見方もされた。
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年明けの知事選が無投票になるようなことがあれば、吉村氏は3度も県民の審判を得ないことになる。県民は政策論争を聞いて県政を託すという選択機会が失われ、結果を追認するしかない。少なくとも健全な県政の有りようとは言い難い。その意味で県議会最大会派の自民党の責任は重いと言えるのではないか。
自民党県連が組織として吉村氏を支援するのは初めて。来夏の参院選で、できれば知事との連携を視野に入れて支援するとの思惑があるとしても、吉村氏の支持母体は野党系組織。連合山形、立憲民主党、国民民主党が支援を表明している野党系現職とのせめぎ合いは厳しいものになることは必至。知事選後の参院選で、自民党の力量が問われることになる。