2025年(令和7年) 1月23日(木)付紙面より
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鶴岡市の慶應義塾大先端生命科学研究所とメタジェンなどは20日、ハムスターを用いた共同研究で、豆由来の食物繊維「グアーガム分解物」の摂取によって、新型コロナウイルス感染症の重症化を抑止できることが明らかになったと発表した。この分解物が腸内細菌叢(そう)に作用することで、免疫機能などに影響する二次胆汁酸の生成を促し、抑止につながったという。研究成果は14日付で国際的なオンライン学術誌に掲載された。
腸内細菌叢の研究に携わる慶應先端研の福田真嗣特任教授と楊佳約特任助教、福田特任教授が社長を務めるバイオベンチャー・メタジェン、東京大医科学研究所による共同研究。同分解物はインドなどで食べられている「グアー豆」の酵素分解で抽出できる食物繊維。
研究では、腸内環境への影響が知られている同分解物に着目した。ハムスターにデンプンの「通常食」を与えたグループと、5%を同分解物に置き換えた「添加食」を与えた2グループに分け、2週間後に新型コロナに感染させ、その後の10日間も同じ餌を与えた結果、通常食のハムスターの生存率が25%だったのに対し、添加食は100%生存となり、明らかな差が出た。
発表によると、通常食に対して添加食グループのハムスターの便には、腸内細菌の代謝で産生される二次胆汁酸のウルソデオキシコール酸が多く、血清中では二次胆汁酸のデオキシコール酸の濃度が高いことが分かった。福田特任教授らは先行研究で、この2つの二次胆汁酸は新型コロナの重症化を抑制することを明らかにしている。今回は、食物繊維のグアーガム分解物が腸内細菌叢に作用することで、これらの二次胆汁酸の代謝物質産生を促進し、重症化の抑止につながったとしている。
福田特任教授は「新型コロナに限らず、さまざまな新興感染症が広がる可能性がある。これに対抗できる感染症に強い体づくりに研究成果を役立てたい」と話している。