2025年(令和7年) 2月2日(日)付紙面より
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観光庁の「新事業発見成果発表会」が1月29日、都内品川区で行われ、出羽庄内地域デザイン(鶴岡市)の小林好雄社長(71)=情報誌Cradle編集長=がスピーチした。欧米豪の訪日観光客(インバウンド)、特に富裕層向けに商品を企画、来庄してもらえるかの展望を100人を超える関係者の前で話した。「観光コンテンツの販売戦力」とのパネルディスカッションにも参加した。
絞れば欧州からの富裕層観光客(2人一組)に2泊3日で90万円(庄内までの交通費は含まれない)の企画が、動画を交え12分間で小林社長から明らかにされた。「北国の奥深い日本文化に触れる旅」のタイトルで1黒川能の能太夫による舞の指導2山伏と共に羽黒山石段上り3善寳寺の祈祷(きとう)、座禅体験―を軸にスイデンテラスに連泊し、庄内の文化、食を味わってもらう。昨年4月から企画は動き出し、同8月から動画制作や旅行会社との打ち合わせなど本格化している。一度は来日し大都市観光を体験しているリピーター向け商品。知的好奇心に応えるものになっている。「確実に成功に導けるように活動していきたい」と小林氏は力を込めた。
観光庁の補助金獲得への意欲も十分だ。インバウンドを地方に誘客することを同庁は目標に掲げ、最低400万円(上限1250万円)を補助するもので公募は3月に始まる。コロナ禍以降、東京、京都など大都市圏への観光客は戻っているが、過密の状態。ただ地方誘客は戻っておらず「地域の多様な観光資源を生かした観光コンテンツの造成を進め、来訪目的の創出が必要」として補助金を出す。今回の発表会は有望なアイデアとして、国内7事業者が選定されて集まった。
90万円という金額は一見高額に見えるが、パネルディスカッションの司会を務めた観光プロデューサー岡本岳大さん(45)は「あり得ます」という。インバウンドが1人1日当たり日本の観光で使う金額は10万円のデータを示しながら、現在の円安環境でさらに使える状況があるという。今回の企画も1人当たり45万円で、消費額は範囲内という解釈だ。その中で「観光業者とその周辺だけがもうかるのは駄目でしょう。収益が(案内される)地方の伝統文化の維持、保存に還元されれば地元からの理解も得られ、持続可能のものとして成功するはず」という。
小林氏はこの日、観光業者2社と商談・面談を行うなど、事業の成功に向け活動した。FAMトリップ(海外の有力インフルエンサー、ブロガーの下見旅行)への紹介・招待も重要な要素といわれる。そうなると観光庁の補助金の助けも必要とされる。今後の成果が注目される。(東京支局)