2025年(令和7年) 4月5日(土)付紙面より
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ニジマスとサクラマスを人工的に交配させた養殖用淡水魚「ニジサクラ」を1日、鶴岡市の青龍寺川で市内の男性(76)が釣り上げた。ニジサクラは一昨年の暮れ公益財団法人・県水産振興協会(鶴岡市)が余った幼魚1000匹を赤川支流の青龍寺川に放流し問題となった。今回釣ったニジサクラは1匹でサイズは53センチ。放流されてから約1年4カ月間、自然の川で生き続けていたことが立証される形となった。
釣った場所は鶴岡市黄金地区を流れるポイント。針にミミズを付けて投げ入れたところ「すぐかかった。とても引きが強かった」と糸を引き寄せ、タモですくい上げた。自宅に持ち帰り胃袋の中を調べた結果、川虫がたくさん出たという。男性は放流問題が明るみになった昨年3月に青龍寺川でニジサクラ3匹を釣り上げている。
男性は「またニジサクラが釣れるとは思わなかった。自然界でどのくらい生きられるのかは分からないが大食い体質のようなので在来種の魚が食べ尽くされたりしないか心配。特にウグイが全く釣れなくなったのが気になる」と話した。
水産振興協会でニジサクラを放流したのは2023年12月中旬。養殖業者からキャンセルを受けて処分に困り約500グラムに育った幼魚を放した。昨年3月、サクラマスの解禁と同時に赤川河口で酒田市の釣り人が、これまで見たことがないニジサクラを釣ったことで問題が表面化。ニジサクラに生殖能力はなく雑交配する可能性はないが、水産振興協会は「焼却処分するべきだった。再発防止に努めたい」と謝罪した。
ニジサクラは山形県の特産にしようと2017年、当時の県内水面水産試験場(米沢市)が開発した。23年に本格デビュー、県から委託を受けた水産振興協会では遊佐町の内水面水産センターで幼魚を育て養殖業者に出荷している。刺し身にするとサーモンのようにほのかな甘みがあっておいしい。
放流問題が発覚した当時、多くの釣り愛好家は「自然界のバランスが崩れるのが一番怖い」と表情を曇らせた。県の「生産・出荷マニュアル」では自然界への散逸防止に努めるよう定めている。