2025年(令和7年) 4月9日(水)付紙面より
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2026年に創設100年を迎える平田杯庄内高校野球大会のプレ記念イベント「『平田杯100年への集い』講演会~庄内球児よ、明日に向かって翔ばたこう~」が6日、鶴岡市勤労者会館で開かれた。元NHKエグゼクティブアナウンサーの工藤三郎さんが講師となり、五輪大会や甲子園での実況エピソード、スポーツアナウンサーの使命などについて語った。
同大会は1927年に鶴岡野球協会(現鶴岡地区野球連盟)初代会長の故平田吉郎翁が「庄内で甲子園に出場するチームを育てよう」と創設した。講演会は創設100年のプレイベントとして、市民有志でつくる「平田杯100年の集い」(代表・曽川利和鶴岡地区野球連盟会長)が企画。鶴岡市教育委員会、鶴岡、酒田両地区野球連盟、庄内地区高校野球連盟などが後援した。
この日は高校生から高齢者まで100人余りが聴講した。曽川代表のあいさつの後、整形外科医でエッセイストの黒羽根洋司さん(鶴岡市)が「平田杯のあゆみ」と題し講話。1920年ごろの鶴岡(荘内)中学が東北地区予選で県下最多出場を誇りながら全国出場を果たせなかった経緯や、「高校球児よ、庄内より甲子園目指して奮起せよ」の思いで平田杯を創設した吉郎翁の逸話などを紹介した。
続いて工藤さんが「甲子園大会今昔あれこれ」の演題で講演。ラジオによるスポーツ実況の始まりなど歴史を振り返るとともに、1998年の長野五輪スキージャンプ団体の実況で話題となった「立て、立て、立てぇ、立ってくれ! 立った~!」との叫びについて、「あれは『立て(ば何とかなる)、立て(ばポイントがもらえる、だから)立ってくれ!』という思いが口を突いて出た」といったエピソードに触れた。
また、最初のスポーツアナウンサー魚谷忠氏(故人)による甲子園での全国中学校優勝大会(1927年)の実況風景を取り上げ、「実況とは即時描写。私たちアナウンサーはその作業を100年続けてきた。東京六大学野球の放送が一番人気で、先輩アナウンサーは『講談のようなエンターテインメント性を入れよう』と実況にさまざまな工夫を盛り込んだ」と述べた。
最後に「諸先輩から実況の心を受け継ぎ、言葉を伝え、多くの人たちと感動を共有することがアナウンサーの使命。後輩たちにこの思いを受け継いでいく」と語った。
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工藤さんは大分県出身。NHKでスポーツアナウンサーとして活躍し、高校野球や五輪大会などで実況中継を務めた。2018年にNHK退職後はフリーで活躍しており、スポーツ実況やラジオ番組、シンポジウムの司会などを務めている。