2025年(令和7年) 4月12日(土)付紙面より
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喫緊の課題となっている空き家対策に市町村や地域住民などと連携して継続的に取り組む組織を県が認定する「空き家対策エリアマネージャー認定制度」。エリアマネージャーとして県内4番目、庄内地域では初めて不動産業・エッグカンパニー(酒田市坂野辺新田、伊藤菊雄社長)が先月31日付で認定された。同社は今後、同市黒森地区を中心としたエリアでまずは空き家の把握に努め、地区に伝わる伝統芸能を絡めながら継続的利活用、早期流通を促していく。
県内でも年々増え続けている空き家は、長期間の放置によって倒壊、景観悪化、不法侵入といったリスクが増大する。利活用促進を図るなど県はこれまでも対策を講じているものの、全てに関与するのは難しいのが実情。このため地域事情に即して継続的に対策に取り組む組織をエリアマネージャーに認定し、支援する同制度を2022年度に開始した。意欲ある企業・団体などが活動エリアを定めた上で、課題解決に向けた取り組みを「推進計画」としてまとめ県に提出、審査を経て県知事が認定する仕組み。
同社がまとめた推進計画によると、活動エリアは黒森全域、坂野辺新田と浜中の一部。伊藤社長(68)によると、エリア内にある民家は約400軒。このうち1割余が空き家で、利活用可能な建物はさらに1割程度(4、5軒)という。
活動目標として掲げたのは▽空き家に対する意識改革を図るための勉強会・座談会の開催▽空き家にひも付けた地域の魅力発信▽空き家の利活用による地域活性化―の3項目。このうち伊藤社長が最も重視しているのが「移・職・住」と銘打って実施する「地域の魅力発信」。県内外からの移住者に対して農業を中心とした仕事(職)と空き家を活用した住宅を提供するもので、移住にあたっては年間を通してさまざまな行事がある県指定無形民俗文化財「黒森歌舞伎」にも積極的に関わってもらう。「地域の魅力を広く発信する際、黒森歌舞伎は十分な資源。SNSなどを使って四季折々に地域の魅力を発信することで、課題解決につなげたい」(伊藤社長)という。
伊藤社長は現在、築100年余という黒森地区の空き家の購入を模索中。ここを拠点に勉強会や座談会、移住体験といった課題解決に向けた活動を展開していく予定にしている。「空き家問題は喫緊の課題。地域と連携しながら、まずは資金の確保と具体的事業の検討、ネットワークづくりを進めたい」と話した。